高級魚の豆知識

セミの鳴き声がうるさい、とても暑い夏の出来事。

「先日ね、姪っ子の結婚式に出席するために大阪に行ってきたんだよ。」

そう話すのは我が家のお隣さんであるTさんだ。
わざわざ大阪のお土産を持ってきてくだすったようだ。

「いやぁ、姪っ子の綺麗なことキレイなこと。俺に似てさ、とても美人なのよ。」

とても嬉しそうに話すTさん。
ここで書くのもなんだけど、姪御さんは30歳半ば。今回が初婚であったそうで、叔父としてはやはり心配ではあったらしい。

「でね、新郎新婦ともども、金も無いくせにさ、披露宴は奮発しちゃってさ。」

聞いてもいないのに新郎新婦目の経済事情まで話し始めるTさん。
話によると披露宴の食事がエラく豪勢であったらいしのだ。
羨ましい限りだ。

「ふぐの、フルコースだったんだわな…」

…ん？
一瞬ではあったが、Tさんの顔が曇ったような……

「ふぐってさ、世間一般では高級魚と呼ばれているだろう？」

確かに。
市井の人間にとって、ふぐなど滅多に食べられるものではない。
それこそ何かしらの催しや祭事でもない限りは、ふぐを「食べよう」とすら、思い浮かばないし。

「ふぐにはさ、毒が有るって事で有名じゃない。テトロドトキシンってやつ。」

良くは分からないが、たしか神経に効く毒だったと聞いたことはある。確信はないが。

「元々ふぐには毒なんて無いって知ってるかい？生物濃縮って言ってさ。まぁ言ってみれば食物連鎖の副産物みたいなもんさ。」

「だからさ、初めから養殖してふぐの体内に毒を蓄積させないようにするための手間ってのが、ふぐを高級魚と言わしめる理由なんだよ。」

あとは職人の腕と知識料金なのだそうだ。そういえばふぐを捌くにはたしか免許が必用だと聞いたことがある。