奇々怪々 お知らせ

呪い・祟り

ねこじろうさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

廃墟実況ライブ
長編 2023/07/01 00:55 21,771view
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深夜番組【潜入!あなたの町の噂の廃墟】。
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町で怖い噂のある廃墟を渋いシニア男優のSが訪れて、潜入実況中継を行うというものだ。

来訪する廃墟は基本的に、各地の視聴者から送られてきたお便りで決められている。

Sが言うには、
「時間と手間を掛けて行った割には単なるこけおどし的な場所がほとんどなんだけど、ごく稀に本当にポルターガイスト現象とかの霊現象が起こったヤバいところとかがあったな」ということだ。

次にあげる話は、Sがこれまで訪れた廃墟の中でトラウマ級に恐ろしかったものを後日、本人から直接聞いたものだ。
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「それは梅雨が明け夏も間近になった、蒸し暑い頃のことだった。

その日深夜私が訪れた廃墟は古びた二階建ての日本家屋で、山あいにある小さな部落の外れにあった。

両脇に山林の迫る細い砂利道を抜けると申し訳程度の砂地があり、その先からは立ち並ぶ竹林が車の行く手を拒んでいる。

その奥に目的の家屋はあるということだった。

竹林の手前で皆車を降りる。

それから私は紹介者である視聴者の男性Hさんの背中に付き従いながら満月の下、立ち並ぶ竹の間をスタッフらとともに歩きながら玄関口へと向かっていた。

私の後方にはチェックのシャツを着た髭面のカメラマン、それから小柄の小太りディレクターが続く。

『くそ!デカイ蚊に噛まれた』

最後尾を歩くディレクターの焦る声が聞こえる。

しばらくして竹林を抜けると視界が開けて、半世紀をとうに過ぎたであろう古びた日本家屋の正面がその姿を見せた。

家屋玄関前の広場に歩き進んで行く。

そして立ち止まり向き直ると、正面でカメラを構えたカメラマンに向かって喋りだした。

『今、私はF市北部山あいの集落外れに建つ古い日本家屋の玄関前に立ってます。
今回のこの廃墟への来訪は、当番組視聴者であるHさんのお便りが発端なんですが、今日はご本人にも同行していただいております。
それではHさん、この度の経緯をお願いします』

30代後半くらいの木訥な感じのHさんが私の隣に立ち軽く会釈した後、口を開く。

『ボクはこの近くの部落の者で、今は家業の農家を継いで生活してます。
ここの家は大正の初め頃に建てられたらしく、代々土地の者が住まわれていたそうなのですが、昭和の終わり辺りからずっと空き家だそうです。

これはじいちゃんから聞いたんですが、ここに最後住んでいた家族は初代から数えて3代目だったらしく、そこの父方の祖母、父母、それとその長男と妹だったそうです。家族で細々と家業の農業を営んでいたということらしかったのですが、長男だけはいつの頃か日がな一日家にいたそうです。当時の噂では、屋根裏の座敷牢みたいな部屋に閉じ込められていたということでした』

『座敷牢!?』

令和の今は聞くことのない意外な言葉に驚いた私は、思わず声を漏らした。

Hさんは私の顔を見ると軽くうなずき、また続ける。

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コメント(3)
  • 男が金鹿を殺したんだから、男が金鹿になるんじゃないの?
    妹は急にどした。

    2023/07/03/08:32
  • その男が金鹿になり、妹は祟りで同種に変異したんやろ、、、

    2023/07/04/14:36
  • 皆様、なかなかに鋭いところをつきますね。ラストの場面につきましては、それぞれで解釈していただければ?と思っております。─ねこじろう

    2023/07/04/18:14

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