認知症の親父と過ごした最後の日々
投稿者:ねこじろう (147)
その後よろめきながらもなんとか俺は立ち上がると、箱に蓋をする。
それからそれを抱え、掘り返して出来た穴に再び戻しスコップで土を被せると、ほっと一つため息をついた。
しばらくその場に立ち、埋めた箇所を凝視していると、何故だろう俺の心の奥深いところから熱くたぎるような感情が沸々と沸き上がってくる。
それは止まることを知らず、とうとう心臓が激しく鼓動をし始め、顔が火照りだした。
するといきなりポトリと首筋に冷たいものを感じた。
慌てて夜空を見上げる。
いつの間にか星が一つもなくなっていた。
─これは一雨くるかな、、、
と思い俺は小走りで縁側まで戻ると仏間に上がる。
同時にバケツをひっくり返したように、ぼとぼと雨が降り始めた。
俺は暗闇の中親父の寝ている枕元のところまで歩く。
呑気に寝ている親父の顔を真上から眺めていると、また先ほどの熱くたぎる思いが込み上げてきて喉元に激しい心臓の拍動を感じ始めた。
頭の中がドンドン真っ白になっていく。
俺はポケットに突っ込んでいた先ほどのカナヅチを右手でぎゅっと握りしめた。
それからゆっくり頭上に振り上げていき、親父の額の辺りに狙いを定める。
それから一気に振り下ろそうとした時だった。
「竜二、、、」
突然背後から聞き覚えのある懐かしい女の声がした。
驚いた俺は肩越しに振り返る。
だが視界に入るのは、闇に沈む畳の間だけ。
相変わらず聞こえてくる単調な雨音。
そして次の瞬間、
室内が昼間のようにピカリと明るくなったかと思うと、強烈な落雷音が地響きを伴いながら起こる。
ドドーン!
驚いた拍子に右手からカナヅチが滑り落ちた。
慌てて拾おうとしたその時に、視界に入った親父の顔は、両目を目一杯見開き呆けたようにポッカリ口を開いている。
まるで何か恐ろしいものにでも出会ったかのような表情をしたまま固まっていた。
一抹の不安が心をよぎる。
「親父、、、」
俺は小さく呟き、震える右手でその額にそっと触れてみる。
貴方が親殺しの大罪を犯す前に、お母様がお父様を迎えに来て、最終的に貴方を護ったのでしょうね。
変わり果てたお母様を目の当たりにしたご心痛はいかばかりかと、言葉が詰まります
こういうのが読みたかった
なぜだろう?涙がこぼれてきた。
すごく心に響きました。
⬆️皆様、暖かいコメントありがとうございます!
─ねこじろうより
母親はあの世からでも自分の子供を守るのですね。
何だか、実家の母に会いたくなりました。
コメントありがとうございます。
母の愛は深いですよね。
─ねこじろう
心にくる話ですね
良いものを読ませていただきました
ありがとうございます。
─ねこじろうより
とてつもない名作。
ありがとうございます。
ねこじろう
ここ最近で一番面白かった
ありがとうございます。
─ねこじろう
母の愛っていいものですよね
それにとてもいい名作
母の愛は海よりも深い、という言葉を思いだしました。
母の愛という観点から読んでいただいた方が意外とおられて、驚いております。
─ねこじろう
名作中の名作。この作品を越えるものは?
ヒトコワで心霊怖くて、そして温かい。これは名作!