吊り人
投稿者:ねこじろう (156)
そして終いにはガサリガサリという枯れ木を踏みしめる音が、すぐ背後から聞こえてきた。
何かが確実に近づいてきていた。
激しい心臓の動悸を喉裏に感じる。
「さ、、、榊原さ、、ん」
恐る恐る隣に視線を移しながら声を掛けてみたが、榊原さんは膝頭に顔を埋めたままピクリとも動かない。
そしていよいよ、その気配が真後ろに迫った時だ。
一瞬で背筋が凍った。
榊原さんの横顔の向こうからいきなり奇妙な顔が現れた。
爬虫類のように青白く濡れ光るその顔はまるで無邪気な幼児のようで、無垢な笑みを浮かべている。
そいつは異様に長い首を蛇のように器用に動かし洞穴のような瞳でまじまじと榊原さんの顔を覗き込むと、嬉しそうに一つ大きく頷き、枯れ木のように細く長い指を器用に動かしながら荒縄で作った輪っかを榊原さんの首に通した。
「や、、止めろ、、、」
俺は心のなかで繰り返しながら懸命に止めようとするが、金縛りになったかのように身体はびくともしない。
すると、
ギシ!、、、ギシ!、、、
縄の軋む音とともに榊原さんの身体は上方へと引っ張られゆっくり持ち上がりだし、最後は足先が地面を離れると同時にビクンビクンと数回足先が痙攣した。
微かに鼻をつくアンモニア臭。
そして終いには視界から消え失せた。
それからしばらくすると今度は俺の右肩越しにヒョッコリと、あの不気味な幼児の顔が現れた。
恐怖心はいよいよ極限に達し、全身は凍りついたかのように動かない。
奴はまた嬉しそうに大きく一つ頷くとおもむろに、細くて長い指で俺の首に縄を通した。
─もう、ダメだ
ギシ、、、ギシ、、、
少しずつ首が絞まりだし、息が出来なくなっていく。
そしていよいよ覚悟して強く目を瞑ったその時だ。
ピピピピ!ピピピピ!
胸ポケットに入れた携帯から着信音が鳴り出した。
音は10秒ほど続くと、止んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ふと気が付いた時には不思議なことに、首に通された縄は無くなっていた。
身体も普通に動かせたので、よろけながらもゆっくり立ち上がった。
息子さんの為に生きてください。
読みごたえの、ある文章ですね。うますぎます。
kamaです。情景が見えてくる文章がとてもいいですね。好きです。
なんかスレンダーマンを少し変えたような存在だな吊り人。もしかしてイッチさんが見たのはスレンダーマン??
感動の最後
自殺系はいつも最後に感動があっていい