愛なき子
投稿者:kana (210)
東京に長く住んでいると、割と身近でニュースに出るような事件が発生することがある。
ハデな交通事故だったり、通り魔的犯行だったり、強盗だったり・・・。
だが、今回起きた事件は自分にとってはいたたまれないものだった。
同じマンションの階下、ちょうど自分の部屋の真下で殺人事件が起きたのだ。
しかも犠牲になったのは幼い子供だった。
犯人は母親。
育児放棄の果てに男と遊び歩いて家に帰らず、
幼子を部屋に閉じ込めたまま餓死させたという。
シングルマザーであったハンデを差し引いても、人間的に許されない犯行であった。
と、同時に都会のむなしさも感じた。
薄い壁一枚を隔てただけのお隣さんをはじめ、マンション内の誰もその異変に気付いてやれなかったのだ。幼子の死は、気付いてやれなかった自分にも責任の一端があるのではないかと心が傷んだ。
ニュースで騒ぎとなったため、マンション脇の駐輪場あたりに祭壇のようなものが作られ、
哀れに思った多くの人たちが、花やお菓子等をお供えして手を合わせていった。
自分もそうしようと考えたが、こんな誰向けなのかわからないマンションの脇よりも、もっと近くでお供えをしてあげたいと考えて、事件のあった部屋の前に来てみる。しかしやはり現場は警察の捜査があり近寄れないし、そんなところにお供えをできるはずもない・・・。
そこでいいことを思いついた。
自分の部屋はこの事件のあった部屋のちょうど真上なのである。
近さで言えばお隣さんとほぼ同等。天井と床の厚さだけで隣接しているともいえる。
なのでボクは、事件のあった部屋に神妙に手を合わせた後、自分の部屋に戻って簡易な祭壇を作り、子供が好きそうな菓子パンとジュースをお供えして、幼子の冥福を祈る事にした。
「気付いてあげられなくて、本当にごめんな。天国で幸せに暮らすんだよ」
・・・涙ながらにそう念じたものの。幼子一人で天国にいて、本当に幸せなのだろうかと、モヤモヤとした気持ちも湧いてきた。きっと神様が優しくしてくれる。そう信じる事にした。
・・・異変が起きたのはその日の深夜になってからだ。
布団に入ってからも、事件のことが頭に浮かんで簡単に寝付けそうにない。ゴミ屋敷のように散らかった中で遺体は発見されたという。自分が今寝ている場所のすぐ下に、その現場があったわけだ。いつしか布団の中で手を合わせて震えていた。
そんな時だ。廊下を小走りするような足音が聞こえた。テトテトテトと、子供が小走りするような足音だ。咄嗟にゾクッとして背筋に冷たいものが流れる。
「まさか、あの子が・・・」
ゆっくり、静かに寝室のドアを開けてみる。誰もいない。
そこから居間の方へ、忍び足で向かう。
もしや、と思い先刻作った祭壇の方を見る。
「はっ!」思わず叫びそうになる口を必死で抑える。だが、遅かったようだ。
そこには、2~3歳くらいだろうか、おかっぱ頭の幼子の霊がいた。
白く薄っすらと人の形をしており、瞳は暗闇の中の猫のように光っていた。
画像貼り付けが…
切ないけど暖かくなるお話。すごく良かった。
これも施餓鬼供養の一種じゃないかなとも思う。主人公さんGJですよ。
↑kamaです。コメントありがとうございます。そうです。画像貼り付けまた失敗しました。これまでの経験から、話を書いてから張り付けるのと、貼り付けてから話を書いても長々とそこで読み返したり修正とかしていると失敗するみたいです。とほほ。
施餓鬼供養、確かにそうかもしれないですね。今回、餓鬼さんはきっと目を点にして、最後はホクホクの笑顔になって昇天したと思いたいです。
暖かいコメント、みなさまありがとうございます。
正直、泣けました。
↑kamaです。(*´▽`*)にっこり
泣けるのはストレスが溜まっていた証拠かも。
発散しちゃってください。
心の奥から何か感じる。暖かくてほっこりする
ホラーと感動を混ぜるって難しいと思うけどこれ最高。
もっと見たい
週刊ランキング入りおめでとうございます。
kamaです。
↑ありがとうございます。
↑↑難しいですよね。怪談朗読する人にとってはどーゆーテンションで語ればいいのか迷うかもしれないですね。
今後ももう少しだけ、いい感じのと、いい感じじゃないのとを織り交ぜて上げていく予定です。
お楽しみに。
幼子でも、愛を知れた事でしょう。
↑kamaです。コメントありがとうございます。なら天国に行く資格は十分ですね。
同情するなら「満足な食事」を与えてくれってことですね。
こんなことがあったら
そのうちkamaさんかお婆さんのどっちかの守護霊とかになっちゃいそうですね。
2ch名作物語【ゆっくり解説】がYoutubeでこの作品を動画化してるんだが、口の周りにご飯粒いっぱいつけた幼子がかわいすぎて萌えるw
kamaです。本日、大変好評をいただいてますこちらの「愛なき子」の前日譚とも言えるお話、「夏休みに田舎であったこと」(加筆修正版)を公開させていただきました。「愛なき子」の主人公が小学3年生の頃に体験した心霊現象のお話で、おばあちゃんの生前のお話にもなります。ネタバレ防止のために「愛なき子」を先に公開させていただいておりました。
両作品を読まれますと世界観が広がってより楽しめるかと思います。
tanuと申します。前日譚含め、読みました。おばあちゃんの優しさに感動、、、夏の北海道の風景(憧れます。行ってみたい)や、おばあちゃんの料理も目に浮かんでとても楽しめました!
↑kamaです。tanu様、遅ればせながらお礼申し上げます。両作品とも読んでいただき感謝です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
ばあちゃんももう亡くなっていたって最後の方まで気づかなかった。
ばあちゃんもその子供も幸せに暮らしてて欲しい