帰り道が分からない
投稿者:ぴ (414)
小学生のときに、私は道に迷ったことがあります。
いつもと違う道を歩いてみようと思って選んだ道が災いし、歩いている内にどっちから来てどっちに向かっているのかも分からなくなりました。
もう半泣きになりながら帰り道を探したけど、元の道に戻れなくて一人でどうしようかと思っていました。
そんなときに、知らない男の人に声をかけられたのです。
普段知らない人に声をかけられたときは走って逃げるくらいに怖がりな性格をしていました。
でもそのときの私は道に迷っていたので、とにかく誰でもいいから助けてくれるならと藁にも縋る気持ちでその人に着いていきました。
本当にくねくねした道を通っていき、子供心に迷路のようですごく怖かったのを覚えています。
その人は不思議な人で、私に何も尋ねないのです。
私がどこに行きたいかも分からないはずなのに、泣いている私の手を引いて、ずんずん進んでいきました。
しかしその人は私がどこから来た子なのかすらも尋ねることはなく、知らないはずです。
なのになぜか真っすぐにずんずんと道を進んで、そして気づいたときには私が迷いこんだ小道の前まで送り届けてくれました。
そこに戻ったときに、すごく安心しました。
やっと帰って来れたと思ったのです。
すぐに連れてきてくれたその人にお礼を言おうとして、その人の顔を覗き込みました。
深くかぶった帽子でそれまで見えなかった顔をそのとき初めて見ました。
そして私は叫んでしまったのです。
だってその人の顔は凹凸があるだけで目も鼻も口もなかったのです。
私が叫んで離れたら、その人は元来た道へ走って逃げていきました。
私はそれを見て慌てて追いかけていったのですが、その人が逃げて行った道が途中で行き止まりになっていたのです。
今考えてもとても不思議な体験で、あの道は一体どこに続いていたのだろうと思います。
もしかしたら私はあの日、人が通れない道に迷い込んでいたのかもしれません。
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