ふようかぞく
投稿者:リュウゼツラン (24)
続く家族の不幸に、僕らは憔悴していた。
僕ら兄妹は葬儀に関して特に準備を手伝うこともなかったし、ただショックを受けただけだったけれど、祖母の葬式が終わってやっと一段落した所での祖父の訃報に、両親は大変だったと思う。
沈む気持ちのまま、読み途中の本を父の部屋から持ち出すと、『ふようかぞく』のしおりにはクロの名前が書かれていた。
犬まで扶養家族に入るのかな?
僕は法律なんて全然分からないから、まぁそんなものなんだなとここでもあまり気に留めなかったけど、翌日クロが犬小屋で息絶えているのを見て、漸く疑念を抱く。
しおりに名前を書かれた順に亡くなっているという事実に、僕は身震いする。
流石に三人目ともなると偶然では片付けられないだろう。
クロはたしかに犬だしペットだったけれど、僕にとっては大事な家族だった。
しかし僕はこの時、哀しみよりも恐怖心が勝っていた。
もしかしたらあれは呪いのしおりではないだろうか。
名前を書かれた者は必ず死んでしまうのではないだろうか。
怯えながらも僕は簡単な対策をすぐに思いつく。
僕がこの本を持っていればいいんだ。誰の目にも触れないように。
そうすれば名前が書かれることはないんだから。
そして、斜め屋敷の犯罪は僕の机の引き出しにしまわれ、気味が悪くなったので僕もその本を読むことはなくなった。
数日後、父に「なぁ、島田荘司の本知らないか?」と聞かれる。
「知らない」と咄嗟に嘘を吐いてしまった僕に、父は「……そうか」とそれ以上追求することはなかった。
その日の深夜、尿意で目が覚めた僕はトイレから戻る途中に、兄の部屋から父が出てくるのを目にする。
何となく見つかったらまずいような気がして、僕は壁に張り付くようにして身を隠した。
珍しいな。いつもは絶対話さないふたりなのに。
兄は高校を中退してから毎日家でゲームをして過ごしていた。
アルバイトもすることもなく、食事の時だけ部屋から出るような生活をしていて、初めは口煩く注意していた両親も最近は諦めたようで、今ではもう兄はいない者として扱われていたので、父と兄が話している姿などもう随分と見ていない。
一週間後、兄が部屋で首を吊っているのを母が発見する。
ごはんを食べに来ないので様子を見に行ったら死んでいたとのこと。
僕自身も兄との関わりはここ数年ろくになかったので、正直そこまで深い哀しみを感じなかった。
むしろ、兄が自殺をした理由よりも気がかりなことが僕にはあった。
僕は久々に机の引き出しを開け、島田荘司の本を取り出す。
まさかな……と思いつつしおりを見ると、そこには兄の名前が書かれていた。
僕は戦慄し、気を失いそうになった。
何が起きているか分からなかった。
不要家族
クロ・・・
悲しいい。
最終的にこの家族はお父さんだけになったのかな?