バルコニー越しの人
投稿者:take (96)
知り合いのUさんに聞いた話です。
子供の頃住んでいた実家は、土手を降りたすぐ側にあり、
二階の自室にいても、バルコニーの手すり格子越しに、
土手道を行き来する人の姿が見えていました。
それは向こうからも、こちらが見えているということで、
幼い頃は気にしませんでしたが、年齢とともに、プライバシー的なことが気になり始めて、目隠しシートを張ったり、レースカーテンを常に閉じておくようになりました。
地方大学に入学したので、家を出てアパートで一人暮らしを始めました。
大学にも一人暮らしにも慣れてきた、ある日のことです。
休日の昼間、とくにやることもなく、部屋で寝転がってぼんやりしていました。
なんとなく寝返りを打ち、バルコニーに視線を向けたとき、
すぐ外を通り過ぎていく、ハンチング帽を被った男性の肩から上が、バルコニーの手すり格子越しに見えました。
(ああ、ここも目隠しシートを早く張っておかなきゃなー)と、思ったのですが、
ハッとして飛び起きました。
Uさんがの部屋は3階です。
どんなに背が高い人でも、前を通る人の頭が見えることなんて、あるわけがないのです。
すぐにベランダに出て見回してみましたが、男性の姿はなく、外の道路からの高さを考えても、身長は6メートルくらいある計算になります。
「慌てて目隠しシートを買いに行きましたよ……でも子供の頃の習慣って怖いですよね、一瞬、バルコニーの外を通る人が見えても、おかしいと思わなかったんですから」
Uさんは軽く肩をすくめました。
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