目が出てきた！

授業の一環で、学校の花壇に花のタネを植えることがありました。

みんなで少しずつ種を植えたのですが、その最中に私は花壇の土の上であるものを発見したのです。

花壇に花の種を植えたら、数日経って土の上に芽が出てくることはあるでしょう。

でも私は「芽」ではなく、「目」を見たのです。

それは土の中からいきなり出てきて、私を驚かしました。

思わず仰天して、「目が出てきた～」と近くの子に言いふらしました。

「目だぁ」と近くにいる友達も数人気づいて、私と一緒にその「目」を目撃したのです。

だけど目はあっという間に土の中に潜ってしまって、いなくなりました。

どうやら先生たちは私たちが口々に言った「め」を「目」ではなく、「芽」だと思ったらしいです。

「そんなに早く芽は出ませんよ」とのほほんと笑われました。

でもそれを目撃していたのは私たち子どもだけではなく、近くにいた用務員さんも見ているのです。

「今の見たね？見えたね？」と私は隣の隣にいた用務員さんにしきりに聞かれて、頷きました。

用務員さんは顔が真っ青で可哀そうなくらいでした。

私が見た土の中から出てきた目は数秒だけ土の上をばーっと移動して、土の中に消えてしまいました。

血走った人の目みたいな目で、今思い出すと化け物にしか見えません。

同窓会などに行くときは必ずこの日の話をします。

気になるのはだんだん記憶が朧げになってきて、友達の数人が忘れかけていることなのです。

私たちが目撃したあの目は生きている動物のものだったとは思えません。

きっと何かの妖怪や妖精の類だと思っています。