遊泳禁止エリア

私が高校生の時に体験した話。

私とAとBで高校最後の夏の思い出作りに県内の遊泳禁止エリアのある海にキャンプに行くことにしました。
理由は他の遊泳禁止エリアと違い、しめ縄で区切られているからです。名目上は特殊な水流が流れていて危ないからということになっていますが、私たちの推理ではしめ縄のようなもので囲む必要のある別のナニカがあるのではないかと思ったからです。
そこで私たちは夏休み２週目の土曜日から日曜日にかけキャンプの予定を立てました。
当日は午前中から昼過ぎまで禁止エリアとなりの海水浴場で泳ぎその後は夕飯用の魚を釣り、楽しんでいました。
夜談笑しながら釣った魚を焼いて食べ終え、そろそろ夜中なのでお開きにし寝るためのテントを立てていると、波の音に交じってバシャバシャという音が聞こえてきました。
私ははじめ遠くのほうでブイのようなものが見えたのでそれが波にぶつかって出ている音だろうと思いました。
しかし、目に自信のあるAがよく見るとそれはブイではなくおそらく人間の子供だといいます。
それを聞いた瞬間いてもたってもいられなくなり私は泳いで助けに行くといい服を脱ぎ始め、Bが近所の人を呼びに行くといい走っていきました。
Aには陸からその子供の様子を見ていて私に合図してほしいと頼み陸に残ってもらいました。

実際飛び込んでみると思っていたより波があり、思うように進めませんでしたがあともう少しでたどりつけそうでした。
泳ぎながら不意に気になって陸の様子を見てみると陸から皆で大げさに手招きしています。
早く子供を連れて戻ってこいという意味だと思い急いで泳ぎ、残り数ｍというところで遠くから「そいつが助けてほしそうなやつの顔に見えるか!」と焦った声が聞こえました。
そう言われ子供のほうを見て私は固まりました。波で揺られている私と違い、先ほどまで暴れていた子供は微動だにせずニヤニヤした顔で私を見つめていました。
見た目は５～６歳児目は穴が開いたように真っ黒。口は裂けたような三日月状でニヤニヤしながら声は出さずパクパクと動かしていました。私にはその時「タスケテタスケテ」と動かしていたと考えています。
その瞬間私は叫びながら急いで陸に戻りパニックになっていたところへＡＢとＢが呼んできたであろうおじさんが駆け寄ってきて「危ないところだった」と言われました。
どういうことかと説明を求めると、Ｂ曰くすぐ近くの家の戸を叩き出てきたおじさんに説明すると「もしかして」といい双眼鏡と電話を片手に海岸へ走っていき、海岸へ着くや否や双眼鏡を除き一瞬固まったのちに私を陸に連れ戻すように言われたそうです
Ａ、Ｂは最初子供がおぼれているのにどうしてとおじさんと言い合いになっていたそうですが、双眼鏡を渡されたのでお互い覗いてみると私が見た通りニヤニヤした子供が水面から微動だにせず顔を出していたので急いで叫んで陸に戻ってきてもらったとのことでした。
おじさん曰くあいつに捕まっていたら命は無かったそうで、過去にもこのようなことがあったこととその時は間に合わず、１名亡くなったという話を聞きました。
その子供はおじさんが小さい時から出没するらしく、十数年前には立て続けに死者が出たため一度は海水浴場自体を閉鎖するような話になったのですが、貴重な観光資源を減らしたくない市は形だけでもどうにかしようと神社に相談したときに祓えるような存在ではないため行動を制限するという対策を取とることになったそうです。

今では遊泳禁止エリア外では死者が出なくなったそうですが遊泳禁止エリア内ではたまに子供がおぼれているという報告が上がるそうです。
おじさんはここまで話し終えると、安堵のため息交じりに今日はもう遅いから帰れと言い去っていきました。
お礼を言いつつテントを３人で片付けていると、Ｂが「ヒッ」と声を出しました。何事かと思い見てみるとさっきの溺れていた子供が音もたてずに海から陸へ上がってきているところでした。
それを見た３人はテントをほっぽり出して急いで遊泳禁止エリアから出てそのままおじさんの家まで避難しました。
逃げながら振り返るとその子供は確かにしめ縄より外には出れないらしくニヤニヤし口をタスケテと動かしながらこちらを見ていました。
腰を抜かしそうではありましたが、何とかおじさんの家に付き事情を説明すると「陸に上がってきたという話は聞いたことがない」と青い顔で言いながら、とりあえずしめ縄から出てきていなかったので大丈夫だろうという結論に落ち着き、夜が明けるまでおじさんの家で休ませてもらいました。
その後は特に何もなく朝おじさんにお礼を言い、少し怖かったのですが遊泳禁止エリア内に設置したテントを撤収して帰ることができました。
しばらくは海に入るのも怖くたまに夢に見たりしていましたが、今では普通に過ごせています。

皆さんも遊泳禁止エリアを見かけてもむやみに近寄らないように気を付けましょう。
もしかしたら心霊系の可能性もありますのでお気をつけて。。