消えたサ〇ダくん
投稿者:isola (3)
そう、サ〇ダくんが居ません。
誰も何も言わないのはいつものように無視しているからだと思っていましたが、担任も何も連絡しないし、そもそもサ〇ダくんの席が無かったのです。
さすがにおかしいと思った私は友達に「ねえ、サ〇ダくん居なくない?」と訊ねました。
すると「誰?」と真顔で返されたのを覚えています。
最初はイジメの延長でサ〇ダくんを『存在しない人』として扱ってるのかと思い、「いや、そういうのいいから。サ〇ダくんの席もないよね。先生も何も言わないし」と話を進めると、逆に友達が私の事を訝しむように見つめて「ごめん、本当に誰の話?」と言ってきました。
それから色んな人に「ねえ、サ〇ダくんて知ってる?」と聞いて回ったのですが、どうしてか全員が共通してサ〇ダという生徒の事を覚えていなかったのです。
担任の先生の出席簿を見せてもらったのですが、サ〇ダくんの名前は載っていませんでした。
忽然と姿を消したサ〇ダくん。
私は意味が分からず暫くは登校する度にモヤモヤしていたのですが、いつの間にかサ〇ダくんの事は頭からすっぽり抜けてしまい、小学校を卒業。
そして、高校生になった時、小学校の同窓会が開かれると知り、私は当時の友達に会いに行きました。
同窓会では懐かしい顔ぶれと再会して当時の事を語らっていましたが、不意に男子達の方では転校したB君やY君の話題が出てきていて、私は聞き耳を立てていました。
「そういやアレ誰だっけ、あいつ」
「誰だよ」
「なんか居たじゃん、アレ」
「だから誰だよ」
男子達は誰かのことを思い出そうとしてもなかなか思い出せないといった、喉まで出かかっている気持ち悪い感覚に悶えていましたが、私はすぐにサ〇ダくんの事だと思い出しました。
どうしてこれまで忘れていたのか不思議な程、あの男の子の存在は「存在しない人」として扱うには強烈に印象的だったのです。
私は男子達に「サ〇ダくんのこと?」と訊ねながら会話に混ざりました。
しかし、男子達は名前を聞いても「サ〇ダ?」「そんな名前の奴いなくね?」「俺覚えてないわ」と、それぞれ首を傾げていました。
サ〇ダくんの名前を出した私は咄嗟に「ご、ごめん、中学と間違えたかも」と笑って誤魔化しましたが、その後、それとなく女子にも「サ〇ダくんって男子のこと覚えてる?」と聞いたのですが、やっぱり誰一人サ〇ダくんを覚えている人は居ませんでした。
写真でもあればいいのですが、四年生の時に消えたので卒業アルバムにも載っておらず、課外学習とかの行事を写した記念写真にも写り込んだ様子はありませんでした。
当時の事をそのまま伝えても一切覚えていない皆にどう説明したらいいのか分からなかった私は、ここでもサ〇ダくんの存在について口にチャックをする事にしました。
今となっては本当にサ〇ダくんの存在が皆の記憶の中から消えたのか。
それとも私が子供の頃に作り出したイマジナリーフレンドなのでは、なんて考えも浮かびますが、さすがに私自身が直接遊んでいたわけでもない相手を生み出したりするものなのかと思い、その説は無いと思っています。
サ〇ダくんは消える前日に『ダイジョウブ、ダイジョウブ、もう消えるから』と言っていました。
もしかしたら、サ〇ダくんは自分の存在を抹消してしまったのではないかと、私は考えています。
どうして私だけがサ〇ダくんの存在を覚えているままなのかは分かりませんが。
ただ、今でもサ〇ダくんはどこかで普通に過ごしているように私は思います。
虐められていたサ〇ダくんは、いじめられっ子の自分を消して、どこかで普通の学生としてやり直しているんじゃないか、と。
そうとでも考えなければ、あまりにもサ〇ダくんという男の子が可哀相で、切なく感じてしまします。
私以外はサ〇ダくんの事を忘れてしまいましたが、サ〇ダくんがどこかで楽しく過ごせている事を私は祈っています。
不思議なはなしですね。
最後の、だいじょぶ、だいじょぶ、消えるからは、先生も含めて、みんなの記憶が消えると言う意味も考えられませんか?
なるほど、それはそれで怖い
なるほど、確かにそうですね。