しかし、「買ったばかりだし、ちゃんと使えるのに勿体ない。それに、あんた以外には私も子どもたちもだれもそのオジサンというのを見ていない。疲れているんじゃないのか。休みを取って病院に行った方がいい」などと言い出しました。
それからというもの、私はできるだけ自宅には寄り付かないようにしました。特に夜間には。
よほど寒くないかぎり基本的に自宅駐車場の車で睡眠をとり、風呂は浴槽を使うことなくシャワーだけで済ませるようになりました。いままで深夜に自宅で行っていた仕事は、すべて二十四時間営業でコンセントの使えるファストフード店でするようになりました。
私の様子を見たママが、いよいよ普通ではない、と思ったのかとうとう観念してあの電子レンジを先日処分してくれました。私はやっと解放されたのです。
いつもの生活が帰ってきたように思われました。
しかし、最近の私には新しい困りごとがあります。同僚たちが明らかに私を避けるようになったのです。最近大きなミスをしてまわりに迷惑をかけたということはないはずなので、最初は、例のレンジのオジサンの件でストレスを抱えるうちに、自分がなにか、だれかの気に障る言動でもしてしまったのだろうかと思いました。けれども、私としてはいつもどおりに仕事をしていたつもりなので、まったく心当たりがありません。そこで同じ部署にいる年齢の近い社員に、思い切って聞いてみました。
それはまったく予想外の内容でした。
「イトウさん(私のこと。仮名)、最近どうしたのさ。おかしいよ」
「なにが?」
「ずっと唸っているでしょ。うーーーーーーーって。仕事しててもトイレ行っててもさ。」
「…え?」
「なに、自分では気づいていないの?唸ってるんだよ、ずっと、低い声で、うーーーーーーって。前からそんな癖あったっけ?それに最近さあ、何か変な鼻歌みたいの歌っているときもあるよね」
「…鼻歌?」
「なんだっけ、ティロリ、ティロリ、ティロリロリ♬みたいなやつ。この前、トイレの個室でもやってたでしょ。なに、あれ。電子レンジじゃあるまいしさ」
電子レンジはもう家にはないのに…。
心当たりの電子レンジはもう処分させたのに、私はこれ以上どうすれば良いのでしょうか。その日、私は体調不良を理由に会社を早退し、その後も病欠しています。休みがつづいて家族にも心配されていますが、もうどうして良いのか正直わかりません。
ずっと例の「ヴーーーーーーーーーー」がどこかから聞こえてきます。いまこれを書いているあいだにも。
お祓いですね。
ゾッとした
正にお祓いしましょう。続報お待ちします。
最高
ぜひ映像化を
めちゃ引き込まれた
てか完全に憑かれてますやん。。
怖すぎる
自分も知らないうちに唸ってるんじゃないかって不安になった
久々にこんなに面白くて怖い話読んだ気がする
取り返しのつかないことになってなければいいけど
面白かった!
ヴーーーーーーーーーー……
がすっごいいい味出してる
非常に面白かった!
楽しそうですね。電子レンジおじさんと友達かあ。
文章うまいですね。
次に黒いレンジを手に入れた人にはこの男性の「顔」が見えるようになるのですね。そうして電子レンジの呪いは感染していく。