秘密基地への道中に
投稿者:take (96)
私が小学6年生の時の話です。
友達のR君から「秘密基地に行こうぜ」と誘われました。
R君とは、1〜2年生の時に同じクラスで、その後クラスが別々になり、
疎遠になっていたのですが、6年生になってから、ちょっとしたきっかけがあって、また交流が復活していたのです。
私とR君、そして彼と同じクラスの3人の友達の計5人で向かったのは学校から少し離れた山でした。
山といっても丘のようなものですが、雑木林に覆われており、段差や小さな沼があり、危険な場所が多く点在していました。
また、何年も前に首吊り遺体が発見されたという噂もあります。
そんなこともあって、学校からは、行ってはいけないと言われていました。
私以外の4人はしょっちゅう通っているらしく、木々が生い茂る迷いそうな道を、慣れた様子で歩いていきます。
そして、いよいよ木々が深くなり、道ともいえない道を進んでいくうち、なんとなく嫌な気配に襲われました。
肌に粟が立つような、頭の毛穴がゾワゾワとする感じ……これ、アレだ、と思いました。
この世のものでない存在と出遭うときの感覚です。
私は幼い頃から『霊感体質』で、不思議なものを見たり聞いたり感じるのです。
左右が大きな岩に囲まれた切り通しのようなところを曲がった途端、私は悲鳴をあげそうになりました。
木の枝から首を吊った人間がぶら下がっていたのです。
それは髪の長い女性で、汚れてもともとは何色かわからなくなったようなワンピースを着ていました。
裸足で、肌は干からびたように茶色く変色しています。恐ろしくて顔は見ることができませんでした。
一瞬だけ見えたのは、カッと見開いた目と、開いた口からはだらりと垂らした舌でした。
その体は風に吹かれているように、わずかに揺れ動いています。
その場で立ちすくんでいると、R君たちは、
「もうすぐそこだから」
と、言ってずんずん歩いていきます。
(見えていない……R君たちにアレは見えていないんだ)
そのまま前進すると、あの女の人と体がぶつかってしまう、と思ったその時でした。
「え?」
先頭のひとりが、すっとしゃがむと四つん這いになって進んでいくのです。
そうして女性の足先から10センチほど真下を通過していきます。
その後に続いてふたりめも同じように四つん這いで進んでいくのです。
「な、なにやってんの? なんで、みんなあんなふうに……」
私が震える声で、すぐ前にいるR君に尋ねると、
「ああ、あそこを通る時さあ、なんか変な感じなんだよ、なにかがひっかかるっているか……最初蜘蛛の巣でもあるんじゃないかと思ってみんなで調べたんだけどさあ、何もないし」
「何もない?」
「ああ、ほら、なんもないだろ。でもそのまま通るとなんだか気持ち悪いんだよなあ、何かが絡みついてくるっていうか……だから、ここを通る時はこうやって」
そう言ってR君もしゃがむと、私を振り返って、
「犬みたいに這っていくんだよ」
と、笑います。
ほふく前進しても通れないよ。