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心霊

ねこじろうさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

引っ張る
短編 2023/01/27 10:30 1,884view
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ただ彼らも男の子と同じように顔と手足が真っ黒くぼやけた感じで私は何だか無性に恐ろしくて、呆然とその場に立ち尽くしていたんです。

しばらくすると私はトレイを持って食器返却台へと歩いて行きました。

その時に親子の座っていたテーブルの方を振り返って見たのですが、もう誰も座っていませんでした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

午後からは講義もなかったので何とはなしにブラブラとキャンバスを歩いていると、正面から高木君が歩いてきます。

バイト明けだからでしょうか、その顔はかなり憔悴しきってました。

すれ違いざまに「元気?」と声をかけると、ちょっと驚いたように私の顔を見て「ごめん、ちょっと今から少し時間ある?」と言うので、2人並んで近くのベンチに座りました。

しばらくして目の前を行き交う学生たちを眺めながら、高木君は訥々と喋り始めました。

「実は昨晩きみが帰った後、朝方まで仕事してアパートに帰ったんだ。大学は午後から行くつもりだったから少し仮眠をとろうと横になっていたんだけど、しばらくして携帯が鳴ったんだ。
でると僕と入れ替わって入った朝勤務の人からで、何か切羽詰まった感じだったからどうしたんですか?て聞くと、深夜から駐車場に停まっていた車から親子の遺体が発見されたということだった。警察の話によると、車を閉めきり練炭を炊いて無理心中していたみたいで、3人は互いの片腕をロープで繋いでたというんだよ。
逃げ出さないように、、、」

私の背筋に冷たい何かが走りました。

高木君は怯えた顔で話し続けます。

「僕さあ最後に会計したから、その親子のことはっきり覚えてるんだよ。

お父さんは背広着てて真面目そうな感じで、お母さんはベージュのブラウスで優しそうな感じだったんだけど、男の子は何故だか悲しそうな顔をしてじっと上目遣いでこっちを見てたんだ。
僕、その時の顔がどうしても忘れられなくて、、、」

高木君は一通り話すと、がっくりと項垂れました。

いつの間にか私の心臓は激しく脈打ちだしてました。

そしてガタガタと震える両膝を止めることが出来ませんでした。

【了】

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