叔父にそっくりな甥っ子
投稿者:ぴ (414)
私の叔父は親族でも有名な厄介な人物でした。
私の母はとても穏やかでおっとりした人なのですが、叔父は血のつながりがあるのに、そんな母に似ても似つかない暴力的な人間だったのです。
学生時代に学校の窓という窓を割って歩いたという逸話もありますし、学校の先生を殴って退学になったこともあるみたいです。
大人になってからもそういう性質は留まることなく、何度か警察にお世話になり、刑務所に入ったこともあると聞きました。
私はそんな叔父と数回会ったことがあります。
基本的には子供が嫌いで近づかなかった叔父ですが、母の実家に帰省したときに、丁度部屋にいた叔父に「やかましい」と怒鳴られて、思いっきり頭をどつかれたことがあるのです。
まだ小さかった私ですが、叩かれてわんわん泣きました。
そしたら「うるさい」とさらに殴り掛かってきたのです。
もう子供だからなんて言葉は通用しないような人だったし、恐ろしくカッとしやすい性格でした。
当時私はまだ小さかったのですが、よっぽど怖かったのかそのときの思い出は嫌ってくらいしっかり記憶に刻まれています。
そんな叔父ですが、死ぬ時だけは本当に呆気なかったです。
叔父はもう数年前に若くして他界しました。
どうやら心臓系の病による突然死だったらしく、この世を去るときだけはあっという間でした。
そんな叔父の死から数年後に私の弟に子供ができたのです。
弟はできちゃった婚でした。
ちょっとチャラくて遊び癖があったので、姉としては心配していたのです。
けれど彼女に子供ができたときはすぐに入籍するくらいには彼女とできた子を大事にしていて、安心しました。
私としてはこの年で甥っ子ができるとは思わず、すごく複雑ではありました。
でも弟に男の子だと子供を見せてもらったときは、まるで自分の子みたいに可愛く思いました。
甥っ子たちが退院してすぐに、私は甥っ子に会いにいきました。
小さなその子を抱いたときは本当に満ち足りたような気持になりました。
だけど、手を握ってみたときに手の甲に不思議なあざを見つけたのです。
なんだか見覚えがあるあざで、私は自らの記憶を辿っていきました。
そしてそれが叔父の手の甲にあったあざにそっくりだったことに気づいてしまったのです。
口に出しかけて、引っ込めました。
だって叔父と同じ場所にあざがあるなんて、あまり嬉しいことではありません。
そこは口にせず、気のせいだと自分に言い聞かせ、私は弟と義理の妹にお祝いを言いました。
そして甥っ子はすくすくと成長していきました。
甥っ子が3歳になったある正月の日に、実家に帰省していた甥っ子と遊んでいた私は久しぶりにその手の甲を見たのです。
そしたらあざは広がっており、ますます叔父の手の甲にあったあざに似てきたと思いました。
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