走り来る者
投稿者:ねこじろう (147)
確かに先ほどの反動もあり、私は敢えて車のスピードを落として運転をしていたと思う。
─後ろの車、急いでいるのかな?
そう思った私は左にウインカーを出し、路肩に寄せて停車した。
疲れていたから面倒くさいことは避けたかったのだ。
すると後方の車は右側を猛スピードで追い抜いて行く。
運転手は最後までこちらを睨みながら、何やら喚いていた。
やれやれ最近はみんなイライラしているなとため息をつき再び走りだした。
するとしばらくしてまた後方からクラクションの音がする。
見ると今度は大型のトラックが後方に迫っている。
─ええ?トラック~!?
そう言ってS代が不安げに私の顔を見る。
やむを得ず、左前方に見えてきたコンビニに車を入れると駐車場を横切り、店舗前に停車した。
するとトラックも駐車場に入ってきて、少し離れたところに停車した。
何か文句でも言いに来るのかな?と見ていると、トラックの運転席側のドアが開いて、作業着姿の大柄な男が降りてきた。
暗い駐車場を歩きながら男はゆっくり近づいてくると、私の右手のウインドウをコンコンとノックする。
ちょっと緊張しながらウインドウを下げた。
するとその男は上方から車内を覗き込みながら、こう言った。
「兄ちゃん、あんなことしとったら警察に捕まるよ」
「は?」
訳が分からず聞き返す。
男は呆れた様子で今度はこう言った。
「あんた、気づいてなかったのか?」
「いや、すみません、何のことかさっぱり」
正直に言うと、最後に男はこう言った。
「さっきまでボンネットの上に白い服着た女乗せて走っとったやないか!」
一瞬で全身が凍りついた。
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私はしばらく呆然としながら、立ち去る男の背中をただ眺めていた。
すると突然、S代が左手を強く握る。
横を見ると、何故だか彼女はミラーを見ながらガタガタ震えていた。
もしかして「生きている」女の人だったの?