私の家を燃やしたもの
投稿者:びぜー (1)
私の実家は、東北地方の田んぼの真ん中にぽつんと1軒、立っています。
しかし私が小学生だった頃は、実家の両隣にはお隣さんの家がありました。3軒の家が並び合っていたのです。
それがなぜ1軒になったのか、お話しします。
私が小学1年生だった頃のある日、右のお隣さんが火事に遭いました。老夫婦が2人で暮らしている家で、座敷でタバコの火の不始末があったと聞きました。
幸い老夫婦は無事。ふたりを我が家は受け入れ、空いていた客間に無事だった家財道具を運びこんだりして、泊まってもらいました。
その数日後のこと。
学校に父から「帰ってこい」と連絡がありました。理由は教えてくれません。
訝しげに歩いて帰ると、田んぼの向こうに見えるのは、煙のくすぶる我が家でした。私の家が燃えていたのです。客間の壁が半分崩れ落ち、中が見えていました。
私が動揺しないように、父は火事だとは伝えなかったようです。
我が家を半分焼いたところで火は消しとめられ、今回は我が家と右の老夫婦の2世帯が、左の家に泊めてもらうことになりました。
田舎の家は大きいので、部屋数はゆとりがあるものです。
火と水のダメージがあるため、無事だった家財道具は多くありませんでしたが、左の家の空いている座敷に運び込みました。
その翌日、3世帯が暮らす左のお隣さんの座敷から火が出ました。
なぜ、なぜ、こんなに火が出るのか。
火に包まれる左隣さんの座敷から、右隣のおじいさんが必死に荷物を持ち出そうとしますが、火の回りがはやく、運び出せたのは1つだけ。
それは老夫婦の家の床間に飾られていた日本刀でした。
「この刀は価値のあるものだから、これを売って、当面の資金にするべし」
おじいさんはこの刀を古物商に出しました。
嬉しいことに、この刀は本当に価値のあるものでした。本物の日本刀でした。本当に人を斬ってきた日本刀でした。
これまで3軒で出火した場所はすべて、日本刀を保管していた場所でした。
左隣のご主人は、右隣のおじいさんに対して「おめえがそんなものを持ってるからだ」と怒って関係が悪くなりました。
私の父は「そんなオカルトみたいなことを言うんでねえ」と仲裁しようとしましたが、結局、右隣も左隣もこの地域から引っ越していきました。
こうして我が家はぽつんと一軒家になったのです。
あの日本刀を引き取った古物商さんが、無事だといいのですが。
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