押し入れの人形たち
投稿者:柚音 (1)
若干引きつつ、てきぱきと人形を段ボール箱にうつしていきました。その作業もようやく終わりが見えてきました。
「これが最後になりますね。」
最後に出てきたのはボロボロになってしまっている男の子の人形でした。その顔には恐怖が浮かんでいます。
「これまた随分古いですねえ。」
「えぇ、そうなんですよ。」
本当にボロボロで、今にもばらばらに崩れてしまいそうなほどでした。
劣化して塗装がはがれているせいなのでしょうが、本当に恐怖で歪んだように描かれた表情は見ているだけで私まで不安になってきます。
そうそうに終わらせようと持ち上げた瞬間、
「あっ・・・。」
首が取れてしまいました。取り乱した私は・・・
「あぁ、直せませんかね?」
「うーん・・・ちょっと難しいかも・・・。」
お互い苦笑いしました。その時でした。
「キャァアアー!!!」
突然、依頼者の奥様が大きな悲鳴を上げたのです。彼女が震えながら段ボールの方を指さしていました。
何事かと目を向けました。しかしそこには人形のつまった段ボールがあるだけです。
「どうかしましたか?」
「こっち、こっち見てました」
「は?」
「こっち見てたんです取っ手の穴からっ!」
ぎょっとして取っ手の穴に目を向けますが・・・
「暗くて・・・見えませんね」
すでにテープで蓋をしているので中は真っ暗のはずです。とうてい穴のなかなど見えません。
何かの見間違いだろうとは思いましたが、お客さん相手なのでこれ以上否定することもできず、苦笑いしてごまかすと作業に戻りました。
ですが・・・
「あれ?」
先ほど取れた頭がみつかりません。床に転がっていたはずなのに、どこにもないのです。
きょろきょろとあっちこっち見渡しましたがどこにありません。
旦那さんも一緒になって探してくれましたがとうとう見つかりませんでした。
「どうしましょうか?」
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