押し入れの人形たち
投稿者:柚音 (1)
数年前の話です。当時大学生だった私は長期の休みのたびに便利屋でアルバイトをしていました。
仕事といえば部屋の片づけや、廃品回収のようなものばかりで本当に簡単な軽作業ばかりでした。
しかしときどき奇妙な依頼も舞い込んできており、そのとき任せられた仕事というのが「霊のお祓い」というものでした。もちろん私は寺生まれで霊感が強いとか、そんなことは一切ありません。ただ手が空いてたのが私だっただけで、実際の内容も近所の寺に荷物を運ぶだけの簡単な仕事とのことでした。
うちの社長はお祓い代行?的な感じで受け付けたようです。なにやら、依頼者さんの家で奇妙なものが見つかったらしく、処分したいがどうしていいのかわからないとうちに泣きついてきたそうで、それならば、と社長が引き受け、近所の寺にお祓いを依頼したのでした。
そして、依頼者さんの家からお寺まで私が搬入するよう命じられたのでした。
正直断りたかったのですが、自己主張の弱さと、手当をはずむという言葉につられ、引き受けてしまいました。
当日は雲行きが怪しく一雨きそうだったこともあり、早朝から車で依頼者の自宅へ荷物を引き取りにいきました。
「こんにちわ~。お電話いただいた○○の者なんですけど~。」
私がそう言うと中から依頼者である老夫婦が出てきました。
彼らはこの家で暮らしており、先日家の片付けをしていると押入れの中から大量の人形が出てきたのだそうです。
「気味が悪いんで処分してしまおうと思ったんですが・・・。」
「ちょっと待ってください!それ全部ですか!?」
私は驚いてしまいました。何故なら押し入れの中には軽く100体を超える数の人形が入っていたからです。
「えぇ、そうなんですよ。でもね、よく見ると皆ボロボロなんで捨てる前に一度見てもらおうと思って呼んだわけですよ。」
確かに見てみるとどの人形もかなり古びていて服なんか所々破けていたりしました。
「あぁ・・・じゃあ運び出しますね。」
「お願いしますよ。」
正直、ただの人形ならば言い方がは悪いですが普段ですとゴミ扱いで可燃の袋にでもつっこんいくのですが、さすがに今回ばかりは雑に扱わないようにと指示をうけていたので、ひとつひとつ丁寧に取り出し、段ボールへとつめていきます。
まず始めに押し入れの中に入っていたのは、髪の毛がボサボサになった女の子の人形でした。その子の顔は苦痛に満ちた表情を浮かべています。恐らく、長い時間放置されていたせいでしょう。
「これはいつ頃の物ですか?」
「さぁねぇ。何十年か前だと思いますがね。」
次に出てきたのは綺麗な服を着たおかっぱ頭の人形でした。
「これは?」
「それは確か・・・私のひいおばあちゃんくらいの時に買った人形ですかね。」
結構な年代ものだし値がつくのでは?と場違いなことを考えてしまったことを覚えています。
次は髪の長い女の人の人形でした。
「これってまさか!」
「はい、うちの家系の女は代々これを大事にしていましてね。」
「へぇ~・・・。」
よくある、髪が伸びる呪いの人形そのものでした。
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