しかし、私があの日見た広場にはどうやっても辿りつくことはできませんでした。
最初に様子のおかしい犬を見たあの店の前にゴミを置いてある飲食店までは見つかったのです。
だけどその先は行き止まりになっており、あの日の広場までの道がなくなっていました。
私が思い出す限り、その先もずっと道があったはずなのですがね。
私は引き寄せられるようにあの犬がゴミを漁らしていた飲み屋さんに初めて入りました。
そしてその店主にだけ、酔った拍子にこの話をしたのです。
そしたらその店主が犬のスマホ画像を見せてくれました。
そして店主は「もしかして見たのはこの犬?」て聞いてきたのです。
その写真にはずんぐりむっくりした黒い犬が写っていて、私が見たあの様子がおかしい犬で間違いなかったです。
店主がいうには最近までこの辺りをうろつく野犬がいて、お客さんから何度か「怖い」とか「危ない」とかクレームがあったらしいです。
それで店主が保健所に連絡して、捕獲してもらったようでした。
店主はそれからどうなったか気になっていたのだけど、もしかしたら安楽死させられたのかもしれないと言っていました。
もう老犬だったし、貰い手はないだろうという話でした。
私はやっぱりあの日、死んだ魂を見たのかもしれません。
あの殺風景な広場は魂を吸い上げるそういう場所だったのではないでしょうか。
もし私があそこで魂を吸われていたら、現実の私もアルコール中毒かなにかで亡くなっていたかもしれません。
仕事は無くなったけど命までは取られなくて良かったと前向きに考えています。
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