魂を吸い上げる広場
投稿者:ぴ (414)
私はその日、絶望を感じていました。
職場の職員からクビを言い渡され、派遣切りにあった日でした。
自分では仕事はだんだんとできるようになっている気でいたし、人間関係もほどよく良好だと思っていました。
まさかクビにされるなんて思っていなかったので、その分言われたときのショックはとてつもなく、衝撃的でした。
仕事終わりに一人でヤケ酒し、あてもなく飲み屋街の細道を歩いていたのです。
気づいたら私はどこにいるやら分からなくなりました。
おぼつかない足取りで歩いている内に、迷子になっていたのです。
そんな道の脇に一匹の犬を見たのです。
私が見たとき、その犬はガサガサと飲み屋の前のゴミに頭をつっこんでゴミを漁っていました。
昔と違って野犬がうろつくことなんてほとんど見なくなった今、首輪もついていない犬がいるのはちょっと怖かったです。
その脇を静かにバレないように通ろうとしたら、犬がふっと気づいてこっちを見ました。
野犬に襲われたらどうしようと、私は一瞬身がすくみました。
しかしその犬はこっちを少し伺っただけで、またゴミの中に顔をつっこみました。
やけにずんぐりむっくりした犬で、野犬にしてはガリガリと痩せた様子はありませんでした。
私はなんとか犬に追いかけられることもなく、そこを通過したのです。
そしてまたしばらく細道を歩いていたら、開けた場所に出て、やっと飲み屋街を抜けることができました。
でもそこは開けた広場になっているのですが、本当に何もなかったのです。
店もなければ道もないし、ただ広場が広がっているというような殺風景な場所でした。
私は歩き疲れてしまって、そこで一休みしようと思いました。
辺りを見回したけどやはり自分が知っている道ではなくて、ここがどこなのか分からず泣きそうでした。
仕事をクビになったことも相まって、とても自分が惨めに思えました。
そうしてしばらくその場に留まっていると、後ろから荒い息遣いが聞こえてきたのです。
私が振り返ると、さっきゴミを漁っていたあの犬がこっちにやってくるところが見えました。
見れば見るほど様子がおかしい犬だと思いました。
ずっとぜーぜーはーはーと呼吸が荒く苦しそうだったし、舌がベロっと外に出て奇妙に曲がっているのです。
この様子のおかしさをなんと表現したらいいでしょう。
人間でいえば、クスリをやっている最中のヤバイ人のような言い知れぬ奇妙さをまとった犬でした。
その犬はこっちに来る途中で、私を一瞬だけ見たように思います。
私は今度こそ襲ってくるんじゃないかと恐怖で身震いしました。
すぐに体を起こして立ち上がり、犬がやってくる通路から少しでも遠ざかろうとしました。
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