優しい手
投稿者:ぴ (414)
私のおじいちゃんは私が小さいときに亡くなりました。
すごく懐いていたらしいけど、私はまだ幼かったので、おじいちゃんの顔を覚えていないのです。
だけど、頭を撫でられた記憶だけはなぜかありました。
その手はすごく優しくて、愛情いっぱいでした。
私は小学生のときに親と喧嘩して、一人で家を出ていったことがありました。
あまりに腹が立って家出をして困らせてやろうと思ったのです。
そこは根性があったのか1~2時間くらい歩いたと思います。
できるだけ見つからないように逃げてやろうと思った私はあろうとことか、国道沿いではなく、山道を登ってしまいました。
だけど、途中で雨が降ってきて、心が挫けてその場で動けなくなりました。
夜になってきて、気温も下がって寒くなりました。
周りは獣の遠吠えのようなものが聞こえて、すごく怖かったです。
いつ何か動物に襲われてもおかしくないような山道にいました。
私は身を小さくして道沿いにいたら眠気が襲ってきました。
それからどれくらいかは分からないけど、意識がなくなっていたので、多分眠っていたんじゃないかと思います。
私が気づいたのは私の頭を優しくなでてくれる優しい手の感触に起こされたからでした。
なぜか体が温まっていて、まるで隣に誰かが寄り添ってくれているような気がしました。
この優しい手は遠い昔私を撫でてくれたおじいちゃんの手だと思ったのです。
はっとして顔を上げたけど、私を撫でてくれたあの手の感触が消えました。
そして近くで車の音がしたのです。
どうしようかと迷っていたら「立ち上がって手を思い切り振れ」と耳元で声がしました。
私は言われたとおりにしたのです。
そしたら車はその場に止まってくれました。
幸運なことに車の主は私の友達の父という見知った人でした。
こうして私は家に送り届けてもらえたのでした。
きっと私はあの日、死んだ祖父に助けられたと思います。
あの優しい手は絶対に祖父のものでした。
私の体がなぜか温かったことも、祖父がずっと私を温めてくれていたのではないかと思います。
あのまま山の中で迷子になっていたら私は今生きてないと思います。
だから祖父が救ってくれたんだなと思っています。
心温まる話でした。