毒蛾を踊る

なんと飼育していた彼女の机の奥から、
両目を抉られ、
ズタズタになった
ハムスターの遺骸が出て来たのです。

すぐにこの事は校内中に広まりました。

しかしそれは、僕の考えとは反して、

「可哀想な飼育係がハムスターの死体を机の中に入れられる嫌がらせをされている」

という内容のものでした。

ハムスター発見後、
呼び出された彼女は
先生達の前で泣きじゃくり、
「どうして…」と繰り返し悔やんでいた様で、

その様子を見た先生達も
普段の優しく世話していた姿から、
彼女がやったのではなく、
誰かによる

彼女への嫌がらせ行為だと
判断したという事でした。

でも僕は知っています。

ついさっき彼女は廊下ですれ違った僕に、

泣き腫らした顔で、

昨日の木の下で踊っていた時と全く同じ顔で、

僕に囁いたのです。

「今度はハムちゃんとみんなで一緒に踊ろうね」