毒蛾を踊る
投稿者:宵深(よみ) (1)
長編
2022/12/15
17:11
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どんどん足元の笹藪は深くなるばかりで、
静かに尾行するのは大変でした。
もうこれ以上進むようなら引き返そう、
そう思った瞬間、
僕は彼女の足がふと止まったことに
気付きました。
そこは少し開けていて、
数本、ぽつりぽつりと
椿の木が立っているような場所。
僕は見つからないように
こっそりと
近くの太い幹の木陰に身を潜めました。
すると彼女は、
急にランドセルを
昨日の雨で
まだ少しぬかるんでいる地面に投げ出し、
鈴の鳴るような
ころころとした可愛らしい声で
笑いながらステップを踏んで
狂ったように、
また、とても楽しそうに
恍惚の表情を浮かべて踊り出したのです。
放課後、
空も薄暗くなりつつある中、
小学生一人が
境内の奥の藪の中で
狂ったように踊るなど
普通ならあり得ないほど異質な筈なのに、
その時の僕は
違和感など微塵も感じず、
只々見惚れて居ました。
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何だかこれ以上詮索したら身の危険が及ぶから止めた方がいいです。