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心霊

ちー乃助さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

夜道のドライブ
短編 2022/12/22 12:01 1,800view

これは、僕が学生時代に体験した出来事です。

大学3年生の夏休み、友人3人と静岡県の下田にある別荘に行く道中に恐ろしい体験をしました。
大学生ということもあり、お金も無かった僕たちは実家の車を借りて、東京から下田まで下道で行くことにしました。
出発したのは道が混んでないであろう深夜0時を回ったくらいだったと思います。都心の国道は明るい道が多く、友人たちと他愛もない話で盛り上がっていました。途中でコンビニ休憩を挟みながら、目的地に向けてハンドルを握っていました。
神奈川あたりの山道に入ると街灯も少なくなり、車通りもまばらに。目的地に着くまでには峠を越えないといけない箇所があるのですが、その道は街灯は全くなく、車のヘッドライトを消すと闇の世界に来たような気分になりました。
すると友人が「ここでおばあちゃんとか現れたらめちゃくちゃ怖いよな」と無邪気に笑って話していたのを覚えています。
僕は結構怖がりなので、「そんな冗談はやめろ」と少しムキになって返事をしました。何も起きてほしくないと思いながら、車を進めていたのですが心臓がバクバクでした。
やっぱり少しお金払ってでも高速に乗れば良かったという後悔と共に、車は山道を進んでいきました。

結局峠は無事に越えられ、再び街灯もちらほらと照らし出しました。とは言うものの、深夜2時を回っていたので僕たちの車しか辺りを見渡してもありませんでした。5キロに1個くらい信号はあったのですが、全て青信号。すいすいと車を進めることができました。
目的地まであと30分くらいの時だったと思います。遠くに見える信号が、青から黄色、黄色から赤に変わるのが目に留まりました。

ここまで信号に捕まることが無かったので、なんだよと思いながら信号の指示に従い車を停車させました。
田舎の方の信号だからすぐに変わるだろうなと思い、何も考えずにいると、一人の友人から
「ちょっと待って、これって押しボタン式じゃない?」と強張った声で尋ねてきました。
確かに、標識を見ると押しボタン式と書かれていました。誰かがボタンを押さない限り、信号は赤に変わりません。
僕は「いや、誰かが押したんでしょ」と言いましたが、辺りを見渡しても誰もいません。早く青に変わってほしいと願いましたが、いっこうに変わる気配はありませんでした。
「おい、これどうすんだよ」さっきまで冗談を言っていた友人もパニック状態に。いけないことだと分かりつつも、居ても立ってもいられなくなった僕たちは車を発進させることに決めました。
僕は「もう行くよ」と言う言葉と同時にアクセルを強く踏み込みました。

すると、
「ドン!!」と言う衝撃が車を襲い、何かを轢いてしまったような感覚を覚えました。
でも、周りには何も無いことを確認したし誰かを轢くことは絶対ありえません。

友人からは「今、何かぶつかったよな」と言われましたが、僕は「そんなことはあり得ない」と頑なに突っぱねました。
それでもひき逃げということを拭いきれなかった僕たちは恐る恐る車を降りフロントの方へ回りました。
すると、そこには何もありませんでした。
ホッとすると同時に、何が起きたのか分からない怖さはありました。それからは無言のまま、目的地に向かいました。全員の心臓の鼓動が聞こえるくらい静寂に包まれた車内は今も鮮明に覚えています。

30分の沈黙の後、ようやく目的地に着きました。目的地周辺は明るく、それと比例してみんなの顔も明るくなってきました。
トランクに積まれた荷物を下ろしていると友人から「うわーーーー!」という悲鳴が。持っていた鞄を放り投げて友人の元へ向かうと、フロントの右タイヤに大量の髪の毛が巻きついていました。
僕らはパニックに陥り、その日はその場を逃げるように別荘に駆け込みました。別荘に駆け込んだ僕たちは話題を逸らすことに必死でしたが、なんの話をしたのかは覚えていません。

翌日、もちろん全員が昨夜のことを忘れることもなく恐る恐る車を再確認しました。ですが、昨日あったはずの髪の毛は1本たりとも無くなっていました。

今でもあの時の映像は時々不意にフラッシュバックします。しかし、なぜこんなことになったのかのは今でも分かりません。
あの山道で何があったのか、怖くて誰も追求できず、もう10年近くが経ちました。

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