魂が入り込んだ人形
投稿者:ぴ (414)
でもそれ以上に私は私に懐く沙紀ちゃんが可愛くて妹みたいで大好きでした。
だから日に日にいなくなったことの寂しさを強く感じるようになり、その寂しさを何とか埋めたくて親戚の家に行きたがったのです。
久しぶりに行った親戚の家は、異様というしかなかったです。
なんだか部屋が暗い雰囲気だし、沙紀ちゃんのお父さんも意気消沈して、元気を無くしていました。
父や母が元気づけようと声をかけたけど、響かないように見えました。
そして沙紀ちゃんのお母さんはずっと一体の人形を抱えて、一人でぶつぶつしゃべっているのです。
その姿はとても異常で、父も母もしゃべりかけようもないようでした。
人形は生前沙紀ちゃんがずっと大事にしていた人形らしく、真っ黒の髪の毛に真っ白の肌の市松人形です。
それをずっと抱いていて、離さないのが印象的でした。
私はその人形を見たときからずっと気になっていたのです。
沙紀ちゃんには口元に大きめのほくろがあったのですが、その市松人形にも同じ場所にほくろのようなものが描いてありました。
まるで沙紀ちゃんの身代わりみたいだなとふと思ったのです。
そう思いながら沙紀ちゃんのお母さんが抱いた市松人形を見ていたら、急にその人形の首がカクンとこっちを向いてびっくりしました。
沙紀ちゃんのお母さんが動かしたわけではなく、ごく普通に首が動いたみたいに見えたのです。
まさかと思いました。
その後、おばさんに抱かれたままの市松人形をずっと気にしていました。
市松人形が沙紀ちゃんに似ていたわけではありません。
どちらかというと目がぱっちりした二重でばさばさとまつげに縁どられた沙紀ちゃんと人形は似ても似つかなかったです。
でもなんだか私には沙紀ちゃんがそこにいるような気がしてしまったのです。
そして夜になって、私たち家族は親戚の家の畳の部屋でみんなで泊まることになりました。
父と母は疲れていたのかすぐに眠ってしまいました。
だけど私はなかなか寝付けなくて、ゴロゴロしていたのです。
あの人形がずっと頭に浮かんで消えませんでした。
そしたら畳の部屋の襖がすーっと開いたのです。
私は急に何だと目を凝らしました。
そしたら隙間から誰かが覗ているのが見えました。
私がじっと動かないでいると、襖がさらに開いたのです。
にょきっと真っ白な無機質な手が出てきて、おいでおいでと私を誘うようでした。
普段の私なら怖くて身動き一つできないと思うのですが、そのときの私はなぜか操られるように起き上がって、襖を自分の手で開けました。
襖を開けたら目の前に、沙紀ちゃんが立っていたのです。
元気を取り戻せないお母さんを不便に思ったのかもしれないですね。