トイレの水音

母方の祖父の家はすごく古めかしい家でした。

敷地はうんと広いのですが、代わりにどこもかしこもボロボロな古い家です。

その中でも私が一番怖いと思ったのはぼっとんトイレでした。

今でいう水洗トイレとは違って、水は流れずにそのまま下に落ちていくような仕組みになっている、昔よくあったトイレです。

私は慣れないトイレを使うのがかなり怖かったです。

祖父の家に一泊したとき、私は夜にトイレに行きたくなって起きました。

もう中学生だったし、さすがに親にトイレについてきてほしいとは言えず、一人でトイレに行きました。

そして用を足していたら「ぽちゃん」という音がして、体がびくっとしました。

何の音かと思って身を固くしました。

そしたらまた「ぽちゃん」とまるで水が跳ねるような音がしてきました。

トイレから外に出ると、そのぽちゃんという音はどうやら、私が入ったトイレとは反対側のトイレから聞こえているようでした。

祖父の家のトイレは２つあり、隣にもトイレが設置してありました。

私はなんとなく気になって、音の出所を確かめるために逆側のトイレを開けたのです。

でも開けて後悔しました。

だって開けたらそこには人がいたのです。

しかも相手は見たこともない人で、私は咄嗟にトイレを閉めました。

トイレをしている場面を見てしまったのと、誰だか分からない人が気づかぬ内に隣にいたことに恐怖した二つの意味で閉めました。

その後、「ごめんなさい」と私は謝ってすぐに部屋で寝ている母を叩き起こしました。

母に「トイレに誰かいた」と言って、揺り起こしました。

そして寝ぼけた母を一緒にトイレまで連れて行って確認したけど、もうそこには誰もいなかったのです。

母には寝ぼけていただけだと言われてしまったけど、絶対にそんなことないと思っています。

私は今もあの衝撃的な出来事を忘れられないでいます。

祖父にも話したら「そういえばたまに水音が聞こえることがある」と当たり前のように言っていました。

私は絶対に祖父の家で寝泊まりしません。だってまたあの人と鉢会ってしまうのが怖いからです。

あれが誰なのか今も分かっていないことが怖いです。