人なのか人ならぬモノなのか？

私の職場はビルの3階にあり、窓からちょうど交差点が見えます。
ある日の午前中、なんとなく窓から外を見ると、車道を挟んだ横断歩道の向こう側に、スーツを着た男性が立っていました。
信号待ちでもしているのだろうと気に留めませんでしたが、昼食時にふと外を見ると、まだその男性が立っています。
あれ？　さっきもいたような……間違いかな？　と思っていました。

午後三時過ぎ、なんとなく気になって窓から見ると、まだその男性が立っているのです。
私はいわゆる『見える』体質で、幼少期や思春期にはやたら遭遇して嫌な思いもしましたが、年齢とともに力も弱まってきたのか、最近は見ることも少なくなり、また、見えているのが人なのか人ではないのか判断がつきにくくなっていました。
ちょうど通りかかった同僚に「あの人の着てるスーツどう思う？」と男性がいるあたりを指さすと、「え、どの人のこと？」とやはり見えていないようでした。
「あ、もう向こうのビルに入っちゃったよ、ごめんごめん」となんとか誤魔化したのですが……。

こんな中途半端に見えるくらいなら、まったく見えなくなるか、以前のように人か人でないのか判断がつくぐらいの力は残っていて欲しいものです。
ちなみに、その男性は私が帰る頃には居なくなっていました。