トンネルを徘徊する親子
投稿者:神助 (16)
そして私たちが歩き出すと、なんとあの親子も再びこちらに向かって歩き出したのだ。
心臓がドキドキしているのが分かる。
50メートル、40メートル、30メートル、一歩、二歩近づいてくる。さっきと全く同じ、親子は青白い光を放っていた。
20、10、5,あと1メートル。すれ違う瞬間、同じく生暖かい風が「ブワーーッ」
ここにいる全員が振り返る。すると、親子は私たちが見えるギリギリのところ約70メートルくらい先に居た!
しかも振り返ってこちらを見ている!全員がみるみるうちに真っ青になった。
「ヤバい!帰るぞ!!」
誰かが叫んだ。みんな一斉に走りだす!
もはや花火なんてどうでもいい!私たちは一目散に走って民宿まで帰ってきた。
まだ息が上がっているなかHが切り出す「な、言った通りだろ?みんな見ただろ!?」
「うん。絶対霊だよー、怖かったぁ」Kが言った。トンネルを徘徊していた感じだったのでおそらく地縛霊。
追いかけては来ないだろうと思いつつもその日は念のため、みんなで固まって寝る事にした。
翌朝、朝食の時間女将さんが「昨日はどうだった?」と明るく声をかけてくれた。
私たちは顔を見合わせて昨日の夜の出来事を女将さんに話した。
「ああ、そうだったの…ごめんなさい。怖がらせたら悪いと思って黙っていたのだけど…」
女将さんに聞いた話しによるとあのトンネルは地元では有名な心霊スポットだったらしく、幽霊の目撃が多発しているのだとか。
なんでもトンネルの真上が昔火葬場だったらしく、そういうモノが集まりやすいと教えてくれた。
私たちがあまりに楽しそうだったから大丈夫だろうと思ってあえて何も言わなかったとも。
「なにはともあれ目撃した以外は何もなくて良かった」と女将さん。
夏の休暇がとんだ心霊体験ツアーになってしまったのは言うまでもない。
あっという間の一泊二日も終わり、それぞれの日常が戻っていった。
あれから一週間したある日、Hから連絡が入った。電話に出るとひどく慌てた様子のH。
「もしもし!大変だ、居た!居たんだ!!」
「え?何、どうしたの??」
私が聞くとHは答えた。
「仕事から帰る途中の交差点で信号待ちをしてたら、あのトンネルで見た親子が反対側の道路に立ってたんだよ!」
驚いたのと同時に言い知れぬ嫌な予感がこみ上げた。
「それで、どうしたの?近づいてないよね??」
「さすがに怖いから信号を渡らず別の道を今歩いてる」
それを聞いて少しほっとした。そしてHとこれから会おうという事になり一旦電話を切った。
近くの駅前、待ち合わせ場所にてHを待つ。10分、20分…30分程待っただろうか。Hは来ない、さっき聞いた場所からなら15分もあれば十分なはず。
電話をかけてみる。繋がらない、嫌な予感しかしない。
ロケットランチャー?