揃えられた子供の靴

この不気味なことがある1年くらい前に、家の前のマンションで火災事故がありました。

あの日は消防車の音がうるさくて眠れないくらいで、それくらい酷い火事でした。

確かそこで子供が亡くなったと聞いたのです。

そんな胸が痛くなるような事故があってから、一年後の話です。

私がいつものように仕事でアパートから出ようとすると、出口のところに見知らぬ靴が置いてあったのです。

それは小さくて子供の靴のようでした。

靴をよく見ると後ろに「あかり」（仮名）と書いてあったのです。

誰のものか分からない靴で、私は迷った末にその場に放置して仕事に出かけました。

持って行っても仕方がないし、持ち主が取りに戻って来るかもしれないと思ったからでした。

夜になって家に帰宅すると、あの子供の靴はなくなっていました。

私はそれを確認し、持ち主が持って帰ったのだろうとほっとしました。

けれど次の日の朝にまた同じ、あかりちゃんの靴が玄関の前に揃えて置いてあったのです。

よく見ると靴の端っこが焼け焦げているように見えました。

そこで私はぶわっと思い出しました。

そういえば前のマンションで起こった火災事故に巻き込まれて、子供が焼死したことを思い出したのです。

靴の名前はその子と同じ名前で、ぞっとしてしまいました。

怖くなった私は咄嗟にその靴を大家さんに預けて職場に行きました。

大家さんは気味が悪いとその靴をすぐに処分したと聞きます。

それから1年くらい経って、私はそのアパートから出ていくことになりました。

理由は大家さんが老衰で亡くなって、アパートの管理ができなくなったからでした。

ただ大家さんは年の割に元気で、100歳くらいまでぴんぴんしてそうだと思うくらい健康に見えました。

だけど、あの靴を処分したらしき日から、大家さんの様子がおかしくなりました。

急に誰もいない場所に怒鳴ったり、夜徘徊するようになったり、おかしな行動をするようになったのです。

本当の理由は分かりませんが、もしかしてあの靴が原因なんじゃないかと少しだけ疑っています。

そしてその靴を預けてしまったことに少し罪悪感を抱いています。

あの子供の靴は誰かのいたずらだったのでしょうか。

私は焼死した子供の呪いがかかったものだったんじゃないかと疑っています。