マッチングアプリ
投稿者:やうくい (37)
その方はチャットの返信がものすごく早く、すぐに通話へ移ることが出来ました。
外にいるのか風の音がすごく、ずいぶんと小さな声で話すためとても話しづらかったのですが、なんとか週末にデートの約束を取り付けることができました。
そしてデート当日。駅前のショッピングセンター前で待ち合わせだったので、僕は目立ちそうな看板の横で立っていました。
ところが、約束の時間になっても一向に話しかけられません。
顔写真無しの方に初めて会う時、こちらは顔がわからないためとても大変です。
基本的に向こうから見つけてもらうのを待つしかないのですが、10分待っても何も連絡が無いため、通話をしてみることにしました。
通話を掛けるとすぐに出てくれました。前回通話したのと同じように、風の音がすごく聞こえてきます。
今どこにいるの?と尋ねると、ショッピングセンターの屋上にいるとのことです。
仕方がないので、通話を繋げたまま屋上へ向かうことにしました。
エレベーターで向かっていると、女性はいくつか質問をしてきました。
どうして会おうと思ったのか。今どんな服装をしているのか。周りに人はいるか。
幸い、エレベーターには僕一人でしたので、声が可愛かったからとか、黒のパンツに紺のジャケットだよ、とか答えてました。
そしていよいよ屋上に到着すると、人気のない屋上に女性らしき人影がぽつんと佇んでいました。
女性はこちらに背中を向けており、顔は見えません。通話で着いたと伝えると、「見ていてね。」そう声が聞こえた瞬間女性は突然ガラスに向かって走り出しました。
ショッピングセンターの屋上では、誤って転落したりしない様、ガラス張りの壁が設けられています。彼女はそこに向かって走っていったのです。
正直、何がしたいのか分かりませんでした。
しかし、壁にぶつかると思った瞬間、女性はそのまますり抜けて下へ落ちて行きました。
それと同時に通話も切れました。
しばらく呆然としていましたが、恐る恐る下を覗き込んでも地面は見えませんでした。
僕はエレベーターで下に降りました。正直壁をすり抜けた時点でなんとなく分かっていましたが、地面には誰も落ちていませんでした。
上を見上げると、黒い影が僕を見下ろしていました。怖くなり、その場から急いで立ち去りました。
それ以来、僕はマッチングアプリをやっていません。
その後何か進展がありましたか?
お化けも利用しているのですね。