裏拍手
投稿者:ねこじろう (147)
翌朝私は「あれは空耳、あれは空耳」と自分に言い聞かせながらいつものように階下に降りて、洗面台の前に立つと顔を洗い始めました。
洗い終わって顔を上げ姿見を見たその時です。
一瞬でパッと背中が粟立ちました
肩越しに見える背後の壁の前に誰か立っています。
それはじいちゃんでした。
白装束に身を包んだ、去年亡くなって棺に横たわっていたそのままの姿で、じいちゃんが立っているのです。
ただその2つの目には白目がなく洞穴のように真っ黒でした。
ガクガクと膝を震わせながらも、私はゆっくりと振り向きました。
しかしそこには誰もいません。
ほっと息を継ぎ再び前を向いた時、また背中が粟立ち一気に心拍数が上がります。
正面の姿見にはじいちゃんだけが映っていて、私と向き合うように立っているのです。
じいちゃんは微かに微笑みながら枝のようなか細い手を、ゆっくりこちらに差し出してきました。
まるで、こっちにおいでと言うように、、、
それから信じられないことですが、その筋張った手が鏡の中からニュッと出てきて、私の手首を掴んだんです。
「ひ!」
私は必死にその冷たい手を振りほどくと、そのまま床に倒れ込み気を失ってしまいました。
それからというもの、じいちゃんは事あるごとに鏡の中に姿を現すようになったんです。
だから私今も、鏡は見ないようにしてるんです。
もちろんその姿を見るのが怖いということもあるんですが、それよりなによりもいつか死者の世界に連れていかれてこの世から消え去ってしまうんじゃないかという恐怖から、、、
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ここで堀田美優の話は終わった。
そしてこの一週間後から彼女は会社を休みだす。
始めのうちは体調不良という連絡があったのだが、やがて連絡もなく休むようになる。
携帯に電話をしても繋がらない。
心配になった私がマンションの管理人に連絡し事情を説明すると、彼は日を置いて何度となく彼女の部屋の呼び鈴を鳴らしてくれたのだが返事はなく、また集合ポストには郵便物が溢れかえっているということだった。
それでとうとう私は警察に通報した。
すぐに警察は彼女の自宅マンションに向かい、管理人とともに立ち入ったという。
そして徹底的に室内を調べたが結局、堀田美優は見つからなかったということだった。
室内はきちんと片付けられていてカーテンも閉じられており、テーブルの上には手付かずの夕食らしきものがそのまま置かれていたらしい。
不審に思った警察はさらにマンションの防犯カメラを調べたのだが、最初に会社に連絡を入れた日の翌日からは彼女が部屋を外出した形跡は一切なかったらしい。
連れ去られたということですね・・・
恐怖でしかないです( ノД`)シクシク…