斎場の斉場
投稿者:ねこじろう (147)
中を見て俺は心臓が止まるくらい驚いた。
そこには半分腐りかけているような子供の遺体が横たわっている。
女はその遺体をしばらく愛おしそうに眺めると、決心したように小窓を閉じて『お願いします』と言った。
俺は炉の中に棺を押し込め扉を閉じると、裏に回り点火のスイッチを押した。
火の調整をしながら窓から内視をしていると、やがて棺は炎に包まれ焼け落ち、男の子の亡骸は青白い火だるまになった。
それから骸は反り返り、徐々に崩れ始めていく。
その時、俺は確かに見た。
目映いくらいに燃え盛る炎の上に浮かぶ、白いモヤモヤした霧のような何かを、、、
そいつはしばらくの間、ふわふわとそこにとどまっていたんだが、やがてどこかにすっと消え去った。
それから二十分くらい経った頃かな、火葬は完了した。
俺は男の子の骨を専用のトレイに乗せると、女性に『お骨あげ』をしてもらうため炉前の方に回り込んだ。
だが女性の姿がない。
待合室にも行ったが、やはりいない。
首を傾げながら何気なく玄関の方を見た瞬間、背中を冷たいものが突き抜けた。
土砂降りの中、さっきの女性が立っているんだ。
しかも、さっき焼いたはずの男の子と手を繋いで。
しばらくすると二人は背後に立ち並ぶ木々に溶け込むように消えていった」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
狭い待合室の中は、柱時計の音だけが響いている。
窓の外では暗闇の中、いつの間にか小雨が降っているようだ。
ソファに座る斉場が顔を上げ、隣の古澤に何かを言いかけたときだ
フフフフフ、、、
何処からか、幼い子供の悪戯っぽい笑い声が聞こえてきた。
【了】
多分?お礼するために現れたとしか思いたい。
母子の幽霊って、最恐ですね。
伽椰子と俊夫くんもそうですが。セットで現れると、こちら側としては、古澤さんのようにビビるしかないですもん。それにしても、どうして古澤さんに付きまとうんでしょうね。単にお礼したいだけなんでしょうか。それとも、何か他に理由があるのでしょうか。