ゾンビフィアンセ
投稿者:ねこじろう (147)
「パパ、ママ、わたしね半年前、死のうと思っていたの。
演歌歌手の元彼が今年自主製作したオリジナルCDが31枚しか売れなくて。
それでアパートに行ったら置き手紙があって……。
もう俺のこと探さないで欲しいって。」
美優の目は真っ赤に充血し、声は涙声になっている。
「わたしにとっては、彼がすべてだった。
彼無しの人生なんかあり得なかった。
だから、だから……わたし、、、
もういいかって、、、
それで、、、」
私と妻は、ただ美優の話に集中していた。
「去年買った白いワンピースを着て海に行ったの。
シーズン前の浜辺は誰もいなくて
蜜柑色に染まった砂浜をしばらくさ迷った後、パンプスを脱いで裸足になって、フラフラと水平線に向かって歩きだした。
どんどん進んで腰くらい漬かった時だった。
突然後ろの方から声がしたの。
おーい!おーい!って。
驚いて振り返ると、浜辺に紺のスーツを着た男の人が手を振っている。
まるで砂漠の蜃気楼のように微かに揺れながら。
その声がとても優しくて心地よくて、なぜだかわたし、またゆっくり浜辺に向かって歩きだした。」
「それから、学さんと二人浜辺で体育座りして、夕陽を眺めながらいろんなことを話した」
ここで初めて男が口を開いた。
「入水自殺なんか決してきれいなもんじゃない。
逝くまでは地獄の苦しみだし、
その後の遺体もパンパンに膨れあがっていて酷い状態だよ、と美優さんに言ってあげたんです」
「何で、そんなに詳しいんですか?」
私は男に尋ねた。
「僕がそうだったから」
「は?」
「あの、つまり僕自身が同じような死に方をしたからです。」
想像したらフイタw
人間死ぬ気に?なれば何でもできるで笑ってしまった。