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心霊

コッシーさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

橋に佇む
短編 2022/10/09 18:20 995view
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これは私が大学1年生の頃に経験した話です。
季節は秋の始まり。時折涼しい風が吹くころでした。

遠隔しかなかった講義が徐々に対面で行われるようになり、新しく友人が出来たことで舞い上がっていた当時の私は遅くまで遊ぶことが多くなっていました。

その日も私は自転車で20分ほどのROUND1に友人と遊びに行きました。
日中は大学の講義があったこともあり、集合自体が夜の8時と遅めで「あー、これは深夜コース確定だな~」などとなかば日常になりつつある夜遊びにテンションが上がっていました。

7人ほどで賑やかに遊びちょうど深夜1時を回った頃、私は次の日に当時所属していた部活動があったことを思い出し未だ解散の兆しが一向に見えなかったことから、一人で先に帰ることになりました。
今思えばあの時朝まででも残って皆と一緒に帰ればよかったと思いますが、入部したてで怒られるわけにもいかないと思い当時の私は最短ルートで帰宅することを選んだのです。

最短のルートで帰るといっても道は少しも複雑ではなく、ただ川沿いを延々と20分直進するだけでした。しかし、その道は街灯がかなり少なく月明かりが無ければ完全な暗闇になる場所もあったため時間に余裕があるときは避けていた道でした。

その日は早く帰って寝たかったため、自転車のライトもあるし大丈夫だろうと思った私は友人に別れを告げ、その暗闇へと漕いでいきました。

川沿いを走ってものの5分ほどたった頃、車1台がちょうど通れるほどの歩道付きの橋が遠くに見えてきました。明るいとまでは言わないものの月明かりもあったため、橋の50mほど手前に来たときには橋のちょうど真ん中付近に人影があることに気が付きました。
時刻はすでに深夜1時を過ぎています。
こんな時間に月明かり以外の明かりが無い中、橋の真ん中に立っているなんて気味が悪いなぁーと思った私は自転車を漕ぐスピードを上げました。
人影に近づくにつれその人影が髪の長い女性、白めのワンピースらしきものを着ていることが分かりました。
幽霊を疑っていた私は「そんなベタな服装なことある!?」と心の中で突っ込んでしまいました。

しかし、この一瞬の油断がいけなかったと今でも思っています。それまでは自転車のスピードを落とさず前を見て通り過ぎる事だけを考えていました。
服装に目が言ったことで「いったいどんな人なんだろう…」という好奇心がわいてきていました。

その好奇心から真横を通過する瞬間、ペダルをこぐ足を止め少しだけ減速してしまったのです。

月明かりの中、橋の真ん中に佇む女性の顔が一瞬だけ見えました。
長い髪が涼しい風に揺れ、その隙間から見えたのは、真っ黒でくぼんでいるようにも見える目、全く力が入っていないかのようにあんぐりと開いた口でした。
咄嗟に見てはいけないものを見てしまったと感じた私は川沿いの一本道を無我夢中でペダルをこぎました。

途中「後ろから追いかけてきているのでは」や「前から来たらどうしよう」などと考えてしまいましたが、自転車の後ろに若干重さがあるものが乗っているように感じているのが怖くてたまらなかったので振り返らずに漕ぎ続けました。

それからしばらくして無事に家にたどりついた私は恐怖に震えながらアラームをセットし、すぐさま布団にもぐって眠りにつきました。

その後私の身に何か不幸があったとかはないのですが、一つだけ気になっていることがあります。
あの帰り道はたしかに20分ほど川沿いを走れば家についたはずです。しかしあの日は1時くらいに友達と分かれたのにも関わらず、全力で自転車をこいでいたのにも関わらず、アラームをセットしたときの時間は2時を指していました。

あの帰り道、もしかしたら本当に誰かが後ろに乗っていたのでしょうか。

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