見えない赤ん坊
投稿者:林 (4)
それから数か月後。書斎で掃除機をかけていたときだった。
ゴミ箱を倒してしまい、掃除機のスイッチを切って拾っていると赤ちゃんの泣き声が聞こえて来た。
初めはご近所さんの赤ちゃんが泣いているのだろうなと思っていたが、はっと気が付いた。
だいぶ寒くなり、窓は閉めていた。だから外の音はほとんど聞こえて来ない。
そして、赤ちゃんの泣き声が数か月前と同じ、新生児のような声。
前に聞いたときからだいぶ経っているのに、月齢の浅い泣き方をするはずがない。
他の家に赤ちゃんが生まれてもおかしくはないが、この声は以前聞いたものと同じだった。
気味が悪くなり、さっと掃除を済ませて書斎を出た。
リビングでは何も聞こえて来なかったのでほっとした。
それから掃除を続けるうちにこのことは忘れてしまった。
それから数日後のことだった。
せっかくの週末だったが雨が降ってしまい、家で過ごしていた。
私と夫がリビングでテレビを見ていて、書斎の方で子どもたちが遊んでいた。
書斎に続く襖は開けていたので、子ども達の様子がよく見えていた。
楽しそうに遊んでいた子どもが突然怯えたような表情をしながら私のそばに駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「赤ちゃんの声がする!」
「赤ちゃんが泣いてる!」
「えっ……」
ソファに座っていた私には聞こえて来ない。
夫も同じらしく、訝し気な顔をしていた。
「今も聞こえる?」
「ううん。でもパパのお部屋にいたときは聞こえた」
夫が立ち上がり、書斎へと足を踏み入れた。
「どう? 聞こえる?」
「……聞こえる。赤ちゃんの泣き声だ」
「怖いよ!」
「大丈夫。きっとご近所さんの赤ちゃんだよ」
私は娘たちを抱きしめて安心させるように言った。
「気になるなら向こうで遊ばないでこっちで遊んだらいいよ」
「うん。こっちで遊ぶ」
恨んだ相手本人ではなく場所に憑いてるっていうのが、家族を巻き込む形の呪いで怖かった
しかも呪いはまだ続いてそうで、、、
浮気した旦那が全て悪いわな…