異常者の見る悪夢
投稿者:ねこじろう (149)
男性のもの、女性のもの。
肌の白いもの、浅黒いもの、黄色いもの。
瞳を閉じているもの、大きく見開いているもの。
驚いたことにその中に、私のよく見知った顔があった。
妻と一人娘だ。
「それは、私の妻と娘だ!」
私は必死に棚の方を指さしながら、黒い三角頭巾の大男に詰め寄る。
男は私のことなどお構い無しに、群衆に向かって競りを続けていく。
私は何度も同じ言葉を連呼しながら、男に詰め寄り続けた、、、
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ここで目が覚めた。
喉元に心臓の激しい鼓動を感じる。
生暖かい汗が顎をつたい、胸に落ちた。
暗闇の中、いつもの天井の意匠が確認できたとき、ようやく鼓動は落ち着いてきた。
時計の秒針の音がやけにうるさく感じる。
なんとか半身を起こし、ふと横を見ると、
─妻がいない!
慌ててベッドから降りると寝室のドアを開け、廊下沿いに並ぶいくつかの部屋のドアを一つ一つ開きながら、妻と娘の姿を探していく。
「由香里!、、、美優!、、、」
だが、見つからない、、、
廊下に座り込み、しばらく途方にくれた後、ようやく立ち上がると寝室に戻る。
ベッドの端に座り数分間頭を抱えていたら、突然何かが頭の中で閃いた。
立ち上がり、目の前のクローゼットを勢いよく開く。
ハンガーに掛けられた洋服の下に、クーラーボックスが一つ置かれていた。
引っ張り出して蓋を開けると、ドライアイスの白い煙とともに微かに獣臭が鼻をつく。
中には、妻と娘の首が二個、きちんと収まっていた。
私はほっと安堵のため息をついた。
【了】
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。