山道のお遍路さん
投稿者:ぴ (414)
私はその日、いつもより歩きたくなって、散歩コースを変えていつもと違う山道を歩いていました。
でも坂道を登っても登っても先が見えません。
だんだん疲れてきて、私は山道から引き返すことにしたのです。
まだ真昼間でしたが見慣れぬ道でしたし、静かな山道は音といえばたまに鳥の鳴き声が聞こえるだけで、すごく孤独を感じました。
だから私はUターンして引き返すことにしたのです。
その帰り道に、私はお遍路さんに出会いました。
菅笠を目深に被った顔の見えないお遍路さんに軽く頭を下げて挨拶して、なんとなく「暑いね」と声をかけました。
しかしお遍路さんは何の返事も返すことなく、ひとつ頷いて通りすぎていきました。
そして私が引き返してきた坂道を登り始めたのです。
特に気にすることもないやり取りで、また私は歩き出しました。
そしたら再び向こうからお遍路さんがやってきたのです。
私は今度は頭を下げるだけに留めて、二人目のお遍路さんを見送りました。
お遍路さんと連続で二人もすれ違うことは少し珍しく感じました。
今日はお遍路さんが多いなとそう思いながら坂を下っていたら、また向こうからお遍路さんらしき服装をした人がやってくるのが見えたのです。
しかも今度は3人ずらずらと一列に並んでいるお遍路さんで、気になった私はこんにちはと挨拶し、「今日は何かあるのですか?」と尋ねてみたのです。
そしたら3人がぴたっと同じタイミングで、こちらを振り向きました。
それがあまりに同じ動きすぎて、変な迫力がありました。
お遍路さんは3人でこっちを見たと思ったら、コクリとまた頷いて何も言わずにすれ違い、同じ道を登っていったのです。
最初のお遍路さんと同じくその3人も一言もしゃべりませんでした。
私はなにか怖くなってきて、急いでその山を早足で降りたのです。
家に帰りついて、私は家族にその話をしました。
そしたら家族は「あー、今日はあの日だねぇ」と言うのです。
その日はなんでも魂が山に帰る日らしいのです。
そして私がその日偶然通った道はその霊道に繋がるらしく、私が見たのはもしかしたらそういう類のものかともしれないとまるで世間話のように言われてしまいました。
それ以来私はあの散歩道を避けるようになりました。
また同じ不気味な現場に居合わせたら怖いですし、もし間違ってその霊道とやらに迷い込みたくはないと思いました。
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