禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
「悪いけど、俺は明日親父と出かけるところがあるから、二人は留守を頼めるか?」
と、本当に申し訳ないと思っているのか怪しい複雑な顔をして申し出た。
俺とおふくろは互いの顔を見た後、すぐに了承したが、一体何の用事だろうと少しだけ気になったので訊ねると、祖父が低い声で「知らんでええ」と言い放ってどこかへ行ってしまった。
親父も「じゃあ、明日はそういう事だから」と居間を出て行ったが、俺はどうにも釈然としない。
「何の用事か知ってる?」
「さあ」
何となくおふくろに問いかけてみるも、案の定、そっけない返事が返ってきた。
親父はおふくろにも要件を伝えずにどこに行くんだろうと考えていれば、おふくろが「あ」と声を漏らすので、顔を向ける。
「そういえばかなり前にも来たときも同じような事あったかも」
おふくろは顎に手を添えて天井を見つめる。
何かを思い出そうとする度におふくろはこうやって頭上を見上げる仕草を取る事を知っている俺は、特に気にもせずに話を続けた。
「いつ?」
「あんたがまだ小さい頃よ」
おふくろは寝そべったままの俺より少し高い位置に手を平行にして「こんくらいの時」と話す。
その背丈からすれば恐らく未就学の時だろうと予想できるが、あいにくながらそんな記憶は一切ない。
おふくろ曰く、約12年前に帰省した際にもこうして祖父が親父を伴って何処かへ出かけたらしい。
理由は訊ねれば今の様に祖父に突っぱねられたのですぐに身を引いたそうだが、当時の祖母は「大丈夫やけ」とおふくろの背中を擦ってくれたと言う。
当時も今もさっぱり意味が分からないと話すおふくろだが、当然ながら俺にもその答えは分からないので「なんだそりゃ」と再びゴロゴロする事にした。
翌日になると、早朝から祖父は親父を連れて何処かへ行ってしまったので、俺とおふくろは何もする事がない。
買い物に行こうにもスーパーは車で何十分も走らせた先だし、遊べる様な施設はこの辺りには無い。
おふくろは祖母が居た頃は料理や談笑して時間を潰していたと語るが、その目は何処か寂しそうだった。
特に何もしないまま昼はソーメンを茹で、食後はテレビを見て過ごしていると、あっという間に黄昏時になる。
そして、すっかり夜になる頃には俺はおふくろと一緒に晩飯の支度を整えていて、ちょうどテーブルに並べた所に親父達が返ってきた。
「ただいま」
「お義父さん、あなた、おかえりなさい」
俺とおふくろが玄関まで出迎えると、祖父は普通に靴を脱いでいたが、親父は土色に変色した顔をして気怠そうに俯いていた。
一目瞭然とはこの事だろうが、俺が「大丈夫?」と親父の顔を覗き込めば「あ、ああ」と虚ろな目を瞬きさせて家へ上がる。
親父は食事時もため息をついたりと心ここに在らずと言った雰囲気だったが、結局ご飯の大半を残して早々に寝室へ戻っていった。
こりゃ相当に気分が悪いのだろうと体調を心配したが、祖父は冷静に「ちょっと気疲れしただけじゃけえ、心配せんでええ」と漬物をボリボリと音を立てて食す。
心配するなと言われると余計に引っ掛かるのが俺とおふくろの共通点なのだが、俺は祖父の手前素直に頷く事しか出来なかった。
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!