私が小学5年生の頃、今から30年ほど前の話です。
私の実家は学校から30分程歩く距離にあり、近所の友達と喋ったり寄り道して遊びながら下校していました。
ある夏の日、その日も友達4人で一緒に下校していた私は、あじさい池に寄ろうと提案しました。
あじさい池は直径20メートルほどの池で、粗大ごみやガラクタが投棄されたとても汚い場所でしたが、ザリガニやウシガエルが大量に済んでいたので、子供たちの定番の遊び場の一つでした。
友達は皆私の提案に賛同し、道々で長い木の枝を拾って振り回したり、先生の悪口を言いながらあじさい池へ向かいました。
あじさい池は相変わらず冷蔵庫やテレビ等が横たわる酷い場所でしたが、そんな粗大ごみも私たちからすれば、遊具の一部の様なものでした。
ザリガニを捕まえたりゴミに乗って池の真ん中まで渡ったりとめいめい好き勝手に遊んでいる最中、私は散乱したごみの中に一つの段ボール箱を見つけました。
他のごみがみな薄汚れているのに、その段ボール箱はつい最近棄てられたように、破損のないきれいな状態で、池のほとりに「置いて」ありました。
私は皆に声をかけ、箱を開けてみようと提案しました。
小学生が両手で抱えられる大きさのその段ボール箱を持ち上げると、思いがけない重さでした。
ずっしりと、地面に両腕が引っ張られる感覚を、今でも思い出せます。
一人の友達に手伝ってもらい、池から少し離れた場所に箱を移動した私は、ガムテープを乱暴に剥がして箱を開きました。
あれから約30年、池に着くまでの風景や友達の顔、皆が池で遊んでいた光景は、今でも異様な程ありありと思い出されます。
それなのに、箱を開けてからその先のことは、全く思い出せません。
箱の中には何が入っていたのか?
その後友達と何をしたのか?
家に帰るまでは?
何も思い出せません。
ただ、私や友人たちは、その後もいつもと変わらず生活し、それぞれ進学や上京、就職、結婚…等々を経て今に至ります。
これほどリアルに思い出せる箱のこともつい先日まですっかり忘れていました。
2020年の年末、私は仕事の都合で引っ越しをすることになりました。
上京し就職して現在の妻と10年も住んだ家ですから、荷物も沢山ありました。
クローゼットの中から物を運び出した妻が、「これなに?」と私に尋ねました。
それは、直径30センチほどの段ボール箱でした。
段ボール箱は埃を被り、あちこちひしゃげたり凹んだりしていて、グルグルと何重にも布テープが巻かれていました。
しかしその段ボール箱を見た途端、30年前のあの日の記憶が一気に蘇りました。
私は妻から段ボール箱を受け取りました。
意外なことに、段ボール箱はとても軽いものでした。
不審がる妻を尻目に、私は急いで赤い布テープを剥がしました。
「それぞれ進学や上京、就職、結婚…等々を経て今に至ります」
なのに
「友人たちも皆若くして亡くなりました」?
上コメ
30年前で小五だから著者はだいたい40歳かそこら。
友人らの就職は矛盾なく且つ順調に考えればだいたい22歳くらいでその後即結婚して即全滅したらギリギリ齟齬は無くなる
まぁ著者40代に対して友人達が20代半ば頃に絶滅してたらそれは「若くして亡くなった」でもギリ大丈夫じゃない?
直径30cmの段ボール箱って、普通帽子の箱だろ?
親が結婚のとき引っ越し荷物に入れたんだろ?
幼い記憶は考慮出来ないから無視だなぁ!