始まりは『思い出せない夢』
投稿者:ぴ (414)
その日も小さな子供のような声が聞こえました。
その声は小さく舌打ちをして「ダメかー」と言いました。
目が覚めて自宅のベッドの上だったときに、私は安堵のあまりに泣いていました。
ボロボロ涙が出て、生きていることが信じられなかったです。
悪夢の後、しばらくは放心状態でした。
服を着替える気にもなれず、考えに考えた末、私はその日仕事を休むことにしたのです。
もう心が不安定で、仕事をする気には到底なれませんでした。
仕事をずる休みするなんて、まじめな私にはかなり抵抗がありました。
でもそれ以上に外に出るのが怖かったです。
もう一度あの事故を繰り返すのではないかと思うと体が恐怖を思い出したかのように震えました。
会社に休むと連絡し、その日することもなく、病人らしく夕方まで眠りました。
案外ぐっすりと眠れて、やっぱり何か体調が悪かったのかもしれないと思いました。
夕方になって、会社の人から連絡が。
体は大丈夫かという上司からのいたわりの電話でした。
そして私は上司から「そういえば今日の玉突き事故、危なかったな」と言われたのです。
私はずっと眠っていてその話題が分からないけど、ひやっとしたものが体を駆け巡り、嫌な予感がしました。
ニュースを見ろと言われて、上司との電話の後、テレビをつけました。
テレビから玉突き事故現場の映像とニュースが流れていて、私はそれをひたすら戦々恐々とした気持ちで眺めていました。
私が何度も見た自分の身に事故が起きる夢は、同じ時間に同じ場所で起こりました。
そしてその玉突き事故がニュースで現実に流れているのです。
車が追突された様子や真っ黒に焦げた車の映像を見て、私は腰を抜かすかと思いました。
あまりにも夢と酷似したニュースで、心臓の音がどくどく煩かったです。
私は同じ事故を繰り返す交通事故の悪夢をこの瞬間までは、ただの夢と思っていました。
でもただの夢などではなく、本当は現実だったんじゃないかと思っています。
きっと私は誰かに何度もやり直しのチャンスを与えてもらったのではないでしょうか。
あのときの子供の声が誰だったのかは今も分からぬままです。
あのときはあまりに軽い言い草に憎らしく思っていたのですが、もしかしたらあの声の主が私を助けてくれたのかもしれません。
おそらく私のやり直しは「思い出せない夢」を見た時点から、始まっていたのではないでしょうか。
あの日から私はより一層、一日一日を大切に生きるようになりました。
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