死者に会えるカーブミラー
投稿者:ぴ (414)
私の住んでいる家の近くには、とても古めかしいカーブミラーがありました。
もうボロボロに錆付いていて、いつ倒れてもおかしくないくらいには古びていました。
そこで私は何度もぞっとするような体験をしたことがあります。
いつしか私はそのカーブミラーを「死者が映るカーブミラー」と認識するようになりました。
最初にそこで怖い体験をしたのは、私が20歳の誕生日を迎えた日でした。
歩いて近くのコンビニに向かっていたら、目の前のカーブミラーに手を振る人が映ったのです。
にこにこ笑いながら手を振っているので、相手もわからず私は手を振り返しました。
知り合いだろうと思ったからです。
どうやら相手は腰を曲げたお年を召した人で家の近くのお好み焼き屋のおばあちゃんとは知り合いだったので、その人かと思っていました。
しかし、カーブミラーに近づくに連れて、それがお好み焼き屋のおばあちゃんではないと気づきました。
その相手には見覚えがあって、もう亡くなった父方のおばあちゃんにそっくりでした。
にっこり笑ってこっちを見ているおばあちゃんは、まるで私を愛おしそうな目で見ていました。
その顔も孫を可愛がっていたおばあちゃんそっくりで、私はカーブミラーを三度見くらいしました。
しかし、そんなはずがありません。
死者が写っているわけがないのですから。
角を曲がって相手を確認しようと思って、私はぎくっとしました。
角を曲がるとそこには誰もいなかったのです。
カーブミラーを見直したけど、そこにはもう誰も映っていませんでした。
私は瞬時にひやりとした寒気に襲われました。
2回目の体験は、職場でお世話になった人のお通夜に行く日でした。
その人は突然自宅で持病の心臓発作が起こり、まだまだ若くしてこの世を去りました。
あまりに若くて胸を痛めたのですが、自宅の近くのカーブミラーにその人が映ったときはひやりとしたものです。
カーブミラーに近づけば近づくほどその人でした。
相手はいつもよりずっと青白く、呆然とした顔でこっちを見ており、怖くて怖くてたまらなかったです。
私はカーブミラーをなるべく見ずに角を曲がり、そして誰もいないことに心底安堵しました。
怖かったけど、誰かがいたらどうしようとびくびくしていたので、心からほっとしました。
後ほど見たカーブミラーにはもう誰も映っていませんでした。
3回目は愛犬が亡くなった翌日のことです。
泣きはらした顔を化粧で隠して外に出ると、あのカーブミラーにしっぽを振りながらいつものように甘えたそうにしている愛犬を見つけたのです。
このときは前の二回ほど怖くはなく、むしろ感動しました。
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