真夜中の電車
投稿者:やすらか (1)
そこでなんとなく安心しました。
なんだ、人が乗っているんだ、と。
最終電車が行ってしまった、なんて私の聞き間違いだったんだ、よかった。
そう胸を撫でおろしたのです。
ガラガラの車内でしたが、とりあえず自分の座る席を決め、
座ったところで電車が動き出しました。
真夜中ということもあり、電車の外はとても暗く、街灯もあまりないように見えます。
マンションの廊下のあかりも、夜中までやっているはずのコンビニのあかりすら、見えません。
私のはやる気持ちとともに、電車も急いでくれているのだ、
くらい楽観的になっていました。
しばらく乗っていたのですが、
駅につくたびに、誰も乗降しないままでした。
こんなに人が乗っていないなら仕方がないか、と思っていました。
みんな同時に同じ駅で降りたりするのだろう、という気持ちでした。
ただ、それにしても人の動きがありません。
みんな終点まで乗っているのかと疑うほど、だれも停車駅を表すパネルを
見る人はいなかったことを覚えています。
しばらく駅を越えたところで、私はどこに向かっているんだろう、と自分自身に疑問を抱き始めました。
たしかに彼に会うために電車に乗ってはいるけど、どこまで行こうか。
そもそも、この電車だけで彼のもとへは到着しないのです。
乗り換えが必要だというのに、気づくとわたしも、
周りの乗客と同様にこのままずっと乗っていなくては、という気分になっていました。
電車の中も暖かく、眠気も感じてうとうととしていたということもありました。
降りたくない、とすら思っていたのです。
居心地がいいのです。この電車が。
でも寝てしまうこともなく、終点につくのを心待ちにしていました。
でも突然に、降りなくちゃ、という焦燥感に駆られました。
この電車はなにかがおかしいと気づいたのです。
よく考えれば何もかもおかしい電車です。
乗客はみんな、血色の悪い体調の悪そうな顔をしていますし、
誰一人として、顔をじっとみつめても、見つめ返してきたり、
私の視線に気づく様子もなく、乗っているのですから。
私は、立ち上がって、車掌席まで歩いていきました。
車掌席は、目張りがしてあり、様子がうかがえないようにされていました。
なにか、乗っている人が普通の人であると、確信を得たかったのですが、
それがかないませんでした。
不安になった私は、もう降りよう、降りなくちゃいけない、と思ったので
私は次に到着した駅で、すぐに降りました。
電車は、少し停車したのちに、出発しました。
行ってしまった電車を見つめていた時です。
降りた駅の駅員さんが私の近くに来て、言いました。
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