別荘の住人
投稿者:ぴ (414)
さやを揺り起こしたけどまったく起きてくれなくて、私はそわそわします。
そしてさやを部屋に残してみんながいるはずの広間に行くか、このままさやと部屋に籠るかすごく迷いました。
そうして迷っていたら急に「トントン」とノックオンがしました。
私は一度びくっとその音に驚いて、心臓が跳ねたのです。
あまりに怖かったので、部屋を出ずに私は「どなたですか?」とその場で聞きました。
そしたら少し間があって、「使用人のものです」と低い声で言われたのです。
私はこの館には使用人の人までいたのかと驚きました。まあさすがにお金持ちですからそういう人もいるのかなと思って、私は少しも疑うこともなく扉を開けました。
完全に人がいると思って扉を開けたのです。扉の向こうには誰もいなくて、唖然となりました。
びっくりして固まっている私の隣を少しふわっとした風がすり抜けた気がしました。
「え…」と振り返ったら、いつの間にかさやが起き上がっていました。
私は起きたさやにほっとして声をかけようとしてぎくりとします。
なぜならさやかいつもと違う心底暗い目つきをしていたからです。
いつも元気で明るい性格の彼女とは様子が違いました。
そして私が戸惑っている間に、私の横をすり抜けて走って部屋を出て行ったのです。
びっくりしました。急に起き上がったと思ったら何も言わずに走って出ていくなんて、予想外でした。
慌ててさやを追いかけようとしたら、私はぐっと腕を引っ張られました。
完全にくいっと腕を握られて後ろに引っ張られた感覚があったのです。
私はすぐに振り返ったけど、誰もいなかったです。ぞっとしました。
よく考えたらさやが出て行った今、この部屋には私しかいないはずなのです。
じゃあさっき腕を引っ張ったのは誰?と私は体の芯から寒気がしました。
私はその後逃げるように部屋から転げ出て、さやを探しました。
さやは見つからないまま他の子たちと合流し、そして向こうでもみさきちゃんがいなくなったと言われてびっくりでした。
半日探しても二人は見つからず、親御さんに連絡しようと話していた矢先にやっと見つかりました。
二人がいたのは、なぜか鍵のかかった館の地下室だったと聞きます。
帰ってきた二人は、そのときのことを何も覚えていなかったです。ただ二人揃って非常に何かに怯えているようでした。
本当は何泊かして別荘でゆったり休暇を過ごすつもりだったけど、二人が行方不明になったことで、急遽その日のうちに別荘から帰ったのです。
私はその後さやとみさきちゃん本人にいろいろと聞いてみたけど、初日の楽しかった思い出以外は何も記憶に残っていないようでした。
そのせいでなぜ鍵のかかった地下室に二人がいたのかは永遠の謎になりました。
そして個人的に一番怖かったのがあの館には使用人なんていなかったとお金持ちの子本人の口から聞いたことです。
だったらあの扉をノックして自分を使用人と名乗った人は何者だったのでしょうか。
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