海の誘いにご用心
投稿者:ぴ (414)
その日は友達の家族と海にやってきていました。
その子とは家族ぐるみで仲良くしていて、私と妹はその友達家族と一緒に海に連れてきてもらっていたのです。
だけど私はそこで、とても怖い体験をしたのでした。
砂浜で遊んでいたら、岩陰からにょきっと手が見えました。
そして「こっちにおいで」と手を振ってきたのです。
私はその声に釣られて、足場の悪い岩場のほうへ向かいました。
でも途中で妹が「どこ行くの?」と引き止めてきたのです。
私が「あっち」と指さすと、あの声の人がいなくなっていました。
「あれ?」と不思議に思いながら、私はまた妹たちが遊ぶ輪の中に入ったのでした。
しばらく遊んでいたら、今度は海の方からにょきっと手首が伸びたのが見えました。
そしてまた「こっちこっち」とおいでおいでしてきます。
私はまったく恐怖は感じませんでした。
ただ遊んでいる妹や友達と離れて、招かれるままそっちに向かってしまったのです。
なぜか気づいたときに溺れていました。
いつもなら浮き輪を忘れないのに、その日私はなぜか浮き輪もなく海に入っていったのです。
溺れた私を友達のお父さんが必死に助けてくれたようです。
私は後でどうして一人で海に入ったのかと親に聞かれて、素直に「呼ばれたから」と言いました。
人がおいでおいでと手を振って呼んでいたと話すと、両親は青ざめていたように思います。
あの日海には私たちしかいなかったらしいのです。
友達の家族一家と私と妹以外に、その海に人は誰もいませんでした。
私は一体誰に呼ばれていたのでしょうか。
思い出したら、ぞくりとする体験でした。
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