どろぼう観音
投稿者:ネグホ (3)
あれから無事にブラジルへ到着し、みんな懸命に働き、大変な苦労をしつつもなんとか農業が軌道にのり始め、ようやく落ち着いてきました。
ところが、一緒に行った仲間たちが次々と体調を崩し始めたそうなのです。
熱が出て衰弱していくという症状で、医者にかかっても原因不明だと言われてしまい、休んでいる以外どうにもならなかったと。
とうとう、その男性も床に伏してしまいました。
異国で、慣れない気候や環境の中、ずっと働いてきた疲れが一気に出たのだろうと最初は思っていたのだけれど、どうも様子が違う、眠ると変な夢を見るんです、と。
毎晩、男性の夢の中に、日本から連れてきたあの観音様が出てきて「日本に帰りたい、元のお寺に帰りたい」と訴えてくるそうなのです。
しかも、本人だけでなく、一緒に行った仲間たちの夢にも現れて同じことを訴えるそうなのです。
男性は、観音様を盗みだしてしまった罪の意識からそんな夢を見るのかもしれないと思ったものの、何日も何日も繰り返しそんな夢を見続けたため、これはただ事ではない、観音様を一刻も早く日本に連れて帰らなくてはダメなのではないか、と。
他の仲間たちにも相談したところ、皆の意見が「観音様を元のお堂にお返ししよう」と一致しました。
そんなわけで男性は、病の身を押して、はるばるブラジルから観音様を元の観音堂に返すために帰国してきたのです。
お坊様は、観音様が戻ってきたことに大喜びしました。
村の人たちも喜んで男性を迎え、他の仲間の消息を聞いたりブラジルの話を聞いたりと、観音様を持ち出したことについて怒る人は誰一人いなかったそうです。
観音様は元の場所に戻り、みんなは、ブラジルで仲間たちを守ってくれたお礼と観音様が無事に戻ってきてくれたお礼をこめて手を合わせました。
男性は、しばらく養生しすっかり元気になり、ブラジルへ戻っていきました。
その後、村ではしばらくその話題で持ちきりだったそうです。
地元の人たちは、それ以来、その観音様のことを「どろぼう観音」と呼ぶようになりました。
「でも、今ではそんな話があったことはすっかり忘れられているだろうねえ」、と祖母は笑っていたそうです。
「どろぼう」という言葉だけを聞くと、ネガティブなイメージがありますが、まわりの人の温かい気持ちがこめられていて、なんだか日本昔話のようなほのぼのとした気持ちになる話でした。
今もあるその観音堂、機会があったら久しぶりに行ってみたいと思います。
私の親族にもブラジルに渡った人がいるのでなんとなく親近感わきました
子供に読ませたくなるような不思議な話ですね
面白かったです
いい話
行ってらっしゃい
昔話みたいで良き
ブラジルから戻ってきた観音様…スケールのでかい話で面白い
実際に見てみたいな
NHKとかで追ってほしい
こういう話もっと読みたいです
怖いは怖いけどけどちょっと童話のような感じがある
どろぼうという単語だけで判断しそうでしたが、心が暖かくなりました。
わたしもそんな温かい心を持った人になりたいな。
良い話だぁ〜
観音様もホームシックになるんだ。かわいい。