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不思議体験

足が太いさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

「怖い話をしてあげようか?」
長編 2022/07/23 12:04 4,684view
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中学校の友達に、怖い話が好きな子がいました。
仮にその子のことをアリサちゃんと呼びますが、アリサちゃんは別のクラスだったので、休み時間などで廊下で会うたびに「怖い話してあげよっか」と話しかけてくる子だったのです。
私はそういう話しにはあまり興味がなかったのと、「怖い話をしてあげる」と言うアリサちゃんの目がギラギラとしていて何だか不安に感じたので、いつもそれとなく断っていました。
私が断るとアリサちゃんはすぐ話題を変えてくれるので、とくに気にせず友達付き合いを続けていたのです。

中学校を卒業して、高校になって初めての夏休み。
別の高校に進学したアリサちゃんが、いきなり私の家を訪ねてきました。
部屋に上げて、しばらくお互いの近況を話していると、ふとアリサちゃんが真剣な顔で「怖い話をしてあげよっか」と、言い出したのです。
そのときの私は、久しぶりにアリサちゃんと会えて気分が高揚していたのもあり、「うん、聞きたい。どんな話?」と答えました。

アリサちゃんの怖い話は、こんな内容でした。
「ある女の子がいたんだけど、その子はあるとき事故で亡くなってしまったの」
「女の子は突然死んでしまったことがショックで、幽霊になったんだって」
「女の子は○○町の××っていうお店の前にある交差点で車に轢かれて亡くなったんだけど、幽霊になってからずっとそこから動けなかったの」

「幽霊になって1年、2年…。どれくらい経ったか分からないけれど、あるとき女の子は気づいたの。誰かの体を乗っ取ればいいんだって。そうすれば、自分はここから動けるって」
「でも、とり憑くって言っても誰でもいいわけじゃないし、誰にでもとり憑けるわけじゃなくて…。女の子はそれから2年、3年…、ひたすら自分がとり憑ける相手がやってくるのを待ってたの」
「どれくらい待ってたんだろう。あるとき、幽霊の女の子と同じ年くらいの女の子が通りかかって、この子だって思った」
「女の子は無事その子にとり憑いて、今は普通の生きている人みたいに暮らしているの」

アリサちゃんは淡々と語り、最後に「どうだった?怖かった?」と、問いかけてきました。
正直言って、あまり怖いと思わなかったのですが、話しをしている最中のアリサちゃんの何も感じていないような無表情の方が怖くて…、何も言葉を返せませんでした。
そんな私にアリサちゃんは、「あ、そうだ。用事を思い出したから、今日はもう帰るね」と言って、引き止める間もなく帰っていってしまったのです。
アリサちゃんが帰ったあと、何となく気になってアリサちゃんの携帯に電話をかけたのですが、何度かけても出てくれないし、メールを送っても返信がありませんでした。
「私の反応が悪くて、気を悪くしちゃったかな…」と、気にしていたのですが、とうとうアリサちゃんと会う機会がなかったのです。

そんなことがあってから1ヶ月後、たまたま○○町の××というお店の前を通りがかることがありました。
そのとき、ふと「そういえばアリサちゃんがこのお店の前にある交差点で交通事故があったって言ってたっけ…」と、思い出したのです。
アリサちゃんの話しを聞いた当初は、私を怖がらせる為に知っている地名をわざと使っていたのだと思っていました。

でも、その交差点の片隅に花が供えられているのを見たとき、「あ、あれは本当のことだったんだ」と、ゾワッとしました。
全身に冷や汗をかいたように不快感を感じたので、私はすぐその場から離れました。

それからまた1ヶ月後、家でだらだらと過ごしていると、夜19時頃に携帯に電話がかかってきました。
かけてきたのはアリサちゃんで、出てみると「久しぶり!今って暇?今家の前にいるから良かったらちょっと話さない?」と、明るい声で言われました。
私は久しぶりにアリサちゃんと連絡が取れたこと、そして最後に会ったときの自分の態度に罪悪感があったことから断るのも心苦しく思いました。
だから、「うん、いいよ。でも親に言ってOK貰ってからね」と、言って電話を切ったのです。
そして、自分の部屋を出て、リビングにいた母に「アリサちゃんと会うからちょっと外に出てもいい?」と聞きました。
私の家の場合、門限は18時半ですが、家の前でなら少し時間を過ぎていても許してもらえます。
だから、このときも母は「いいよ」と言ってくれると思ったのですが…。
母は怪訝な顔をして、「え?アリサちゃん?どこの子?そんな子友達にいた?」と、言いました。
私が、「え?アリサちゃんって、ほら、中学の友達の…。私の家に何度も遊びに来たことあるでしょ?」と説明しても、ピンと来た様子はありません。
そしてとうとう「もう夜遅いから、帰ってもらいなさい」と言われてしまったのです。

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コメント(1)
  • 怖かったです。
    お母さんに助けられましたね。

    2024/04/21/16:25

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