顔を上げると目の前に見えたのはあのトンネルで、いつの間に眠ってしまったのかと考えながらもガタガタと震える。決して近付きたくなどないのに、自分の意思とは別にトンネルへと歩み寄ってしまう俺の身体。
だが、今日はいつもと少し違っていた。
──あの女性の姿が、どこにも見当たらないのだ。
「いな……っ、い……」
そう安堵の声を漏らした、次の瞬間──。
突然目の前に現れた血だらけの女性は、俺に向かって恐ろしい顔を見せると奇声を発した。
『────!』
──────
────
『本日昼過ぎ。異臭がするとの通報から室内を調べてみると、死後3日程とみられる男性の変死体が発見されました。──亡くなられた男性は、この部屋に住む村田慶太さん21歳とみられ、そのご遺体は不可欠な点が多く、警察では事件とみて捜査をしている模様です』
携帯に映し出されている映像を眺めながら、私は隣にいる綾香に話しかけた。
「これってさ、K-TAだよね? 私あの動画見たんだけどさ、超怖かったぁ」
「あ、それ私も見たよ。あれさ……幽霊映ってたよね」
「え? 私には何も見えなかったけど……」
「あの動画見てから毎日同じ夢見るんだよね……。血だらけの女の人が、段々と私に近付いてくる夢。なんか怖くて……」
「でも夢でしょ? 大丈夫だって」
「そうかなぁ……」
「もしかして、綾香って意外とビビり?」
「そんなことな──」
突然立ち止まった綾香の顔を覗き込むと、私は小さく首を傾げながら口を開いた。

























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