このまま二度と会えなくなるのではないかと考えると、俺は不安で堪らなかった。
ほんの数秒触れ合っただけとはいえ、すっかりと人魚の魅力に取り憑かれてしまった俺。そのまま急いで人魚の側までやって来ると、その綺麗に揺らめく長い髪にそっと触れてみた。
(もう一度、君の綺麗な顔が見たい──)
何度も側を離れてしまった俺に愛想を尽かしてしまったのか、こちらを振り返ってくれる様子のない人魚。
そんな態度に痺れを切らした俺は、ゆっくりと人魚の正面へと回り込んだ。
「──!!!?」
勢いよく口から大量の空気を漏らした俺は、酸素を求めて海水を飲み込んだ。そんな俺の目に映っているのは、白骨化した女性の姿。
初めて目にする遺体と呼吸困難でパニックに陥った俺は、遠くなる意識の中で直哉の姿が見えたような気がして、それに向けて力なく右手を伸ばしたのだった──。
──────
────
「──涼太っ!!! 大丈夫か!!?」
咳き込みながら目覚めた俺は、心配そうな顔を見せる直哉に向けて小さく口を開いた。
「……ごめん……っ、直哉」
「無理するな! 今レスキュー呼んだから!」
「っ、……ありがとう──」
そう告げると再び意識を失った俺は、次に目覚めた時には病院のベッドの上だった。
大事を取ってそのまま一日病院で様子を見ることとなった俺は、翌日にはすっかりといつもの調子を取り戻していた。
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