(──っ!!?)
驚きに口から空気を漏らした俺は、残り少なくなってしまった酸素を求めて海面へと浮上した。
「……直哉っ!!! 本当に人魚がいるっ!!!」
「えっ!!? ……ま、マジかよっ!!?」
「マジだって!!! いいから来てみろよっ!!!」
興奮気味にそう伝えると、再び海の中へと潜って人魚の姿を探す。先程と変わらぬ場所に留まっていた人魚は、そんな俺に向けて優しく微笑むと手招きをした。
その姿は噂に違わぬ美しさで、一瞬で魅了された俺は夢うつつに人魚の元へと近付いた。
目の前にやって来た俺に向けてニッコリと微笑むと、その右手をかざして俺の頬に優しく触れた人魚。その姿はまさに”絶世の美女”そのもので、放心状態になった俺は目の前の人魚を呆然と見つめた。
──と、その時。
突然背後からグイッと腕を掴まれ、驚きに振り返ってみると直哉と視線がぶつかる。何やら焦ったような表情を見せる直哉は、そのまま俺の腕を引くと海面目指して浮上してゆく。
名残惜しさを感じながら後ろを振り返って見てみると、俺に向けて手招きをしている人魚。そんな人魚の近くに今すぐ戻りたくて、必死にもがいてみるも俺の腕をガッチリと掴んだ直哉は決して離そうとしない。
仕方なく直哉と共に海面へと浮上した俺は、大きく空気を吸い込むと一気に捲し立てた。
「……っ、なんだよ!! 邪魔するなよっ!!! せっかく人魚に会えたのに見失ったらどーすんだよっ!!!!」
そんな俺を前に、顔面蒼白な顔を見せた直哉は息も絶え絶えに口を開いた。
「……ま、マジで言ってんのかよ!? ”アレ”のどこが人魚なんだよ……っ!!?」
「……!? どー見たって人魚だったろ!!? お前こそ何言ってるんだよっ!!!」
「いや……っ、”アレ”はどう見たって──」
「もう邪魔するなよなっ!!」
「……ちょっ! 涼太っ!!!」
直哉の制止を振り解くと、俺はそのまま再び海の中へと潜ってゆく。先程と同じ場所に留まっている人魚の姿を見つけると、心の中でホッと安堵の息を吐く。
(良かった……。また会えた)

























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